第236回:令和時代の運送業経営 休暇・休業・休職対応編(33)
【採用・退職トラブル対応編】㉝
「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウイルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。
今回から、ご相談の多い「採用・退職時における留意事項」について運送業経営者が知っておくべき労働関連法の内容および周辺知識について解説してまいります。(その1)
1.トラブルの背景
中小運送業の現場において、ドライバー採用・退職で多くのトラブルが発生しており、相談が非常に多くなっています。
背景としては、「恒常的なドライバー不足」であることが挙げられます。ドライバーが不足しているからこそ「採用を急ぎ」「面接もほどほどに」入社することとなり、実際に入社してみると「聞いていた給与と違う」「仕事が思ったよりキツイ」「経験がないから不安だ」などの理由で、連絡もなしに出社しなくなってしまうといった事例が起こっています。
会社を辞める際にも「ほかでも募集している」という意識が強いため、安易に「退職」を申し出してきます。
また、募集時に媒体などに提示した事項と実際の労働条件が異なることが原因のトラブルも多く起こっており注意が必要です。
中小運送会社の実施している制度には問題がある場合が多いです。例えば「無事故手当」を数か月連続で不支給としていて分担金や保険免責額を負担させているケース、商品事故などをおこした場合に全額本人負担としているケース、残業代の計算が誤っているケース、有給休暇の際の給与計算が誤っているケースなど、違法な実施内容となっていることが多いのが実情で、経営者側の知識が不足していると言わざるを得ません。
このような背景で採用・退職時に多くトラブルが発生しています。
2.対策
ドライバー不足の問題は「運賃上昇」が実現しない限り今後も継続するでしょう。「運賃上昇」の対策に関しては荷主への指導なども行われていますが一朝一夕には解決しません。
まず、運送会社側で取り組むべき事項は、「募集時と実際の労働条件を一致させること」「給与制度や計算において、違法な運用を行わないこと」「就業規則、書式を整備すること」「ドライバーとのコミュニケーションを図ること」です。
コミュニケーションで最も重要なのは「ドライバーは全て違いがある」という前提で対応することです。縁あって入社してきたドライバーを「育てる」意識を持つことが重要です。
次回以降、トラブルを防ぐための方策について説明してまいります。
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