安全会議の森川美希です。

 かつて多くの職場では、「こうしなさい」「ああしなさい」と、管理者が一方的に指導するスタイルが当たり前でした。とあるX社でも、5~6年前まではそうした指導が中心でした。

 

 しかし事故や違反が続いて減らず、指導方法について約2年前、大きな転換が図られました。新たに取り入れたのは「自分の運転を自分で振り返る」という手法です。

 やり方はシンプルです。業務後、ドライバー自身がドライブレコーダーのSDカードを回収し、自分で映像を確認します。すべてをチェックするのは現実的ではないため、一時停止の場面や狭い道路、交差点などを中心に「よかった点」「危なかった点」を書き出してもらいます。

 その上で管理者と一緒に映像を見ながら、「どうすればもっと安全になるか」を対話の中で整理していきます。一方的に教えこむのではなく、共に振り返るスタイルです。

 この取り組みで特に効果的だったのは、管理者の問いかけがドライバー自身の“気づき”を引き出している点です。「一時停止が丁寧だったね」と褒められれば自信になり、「発進が少し早かったかもしれないね」と指摘されれば、自ら次の改善策を考えるようになります。

 

 こうした積み重ねが、以前は事故や違反を繰り返していたドライバーの行動を大きく変えていきました。いまでは、落ち着きのある安全運転を継続しています。

 自分で自分の運転を見つめ直す時間は、少し手間がかかります。しかし、その振り返りが事故を減らし、結果的に管理の負担も軽減していきます。時間をかけて「自分で気づく場をつくること」。それが、安全指導の本質だと実感しています。