八街児童5人死傷事件から4年 飲酒運転根絶に向けて千葉ト協ができること
2021年6月28日に起きた「八街児童5人死傷事故」から、今年で4年。下校中の千葉県八街市立朝陽小学校の児童の列にトラックが突っ込み、2人が死亡、1人が意識不明の重体、2人が重傷を負う最悪の結果となった。
事故当時、運転手の男はアルコールの影響により居眠り状態だったとされる。あの痛ましい事故から4年が経過した今、千葉県トラック協会に改めて飲酒運転根絶への思い、現在の活動について聞いた。
「酒を飲んで運転しても雇ってもらえる会社に入りたい」。事故を起こしたのは白ナンバーだったが、事故当時、こんな嫌みの電話をはじめ、千葉ト協には一般市民から怒りの電話が相次いだ。電話対応にあたった担当者は、「口に出せないような酷い内容のものもあった」と当時を振り返る。

千葉ト協交通対策部の小出寛調査役は、「白ナンバーと緑ナンバーの違いが分からない一般の方は多い。メディアで取り上げられる『トラック』は、運送会社に直結してしまうのだろう」と話す。
プロとしての意識を持って取り組む緑ナンバー事業者の業界団体としては、世間のそうした認識に対して、やるせなさを感じざるを得ない。
この痛ましい事故を機に、県内でさまざまな動きがあった。
県では飲酒運転根絶に向け、条例が改正された。県民や飲食店等の関係事業者による通報の努力義務、全事業者の車両運行時における「飲酒の有無の確認」の努力義務などを規定。
県ト協では3年前に、ディ・クリエイト代表の上西一美氏と交通対策アドバイザー契約を締結。ドラレコ映像を使用した交通事故防止の安全教育を提供する同社と連携して、会員向けセミナーやDVD製作、会員からの相談対応などを実施してきた。DVDは現在15作品が製作され、会員への貸し出しとYouTubeで公開され、会員企業の事故防止教育に役立てられている。
そのなかで、県ト協が独自に作成した「ドラレコ映像から考える飲酒運転の危険性」には、被害者遺族のドキュメンタリー映像が含まれ、視聴したドライバーへ飲酒運転の抑止、根絶を強く訴える内容となっている。また、飲酒運転の題材を含めたDVD計6種50本が、県の交通安全ライブラリーへ寄贈され、子どもから高齢者と幅広い層の一般市民へ公開されている。
毎年開催される「交通事故・労働災害防止大会」や、半年間の無事故・無違反運動「トラックドライバーズ千葉セーフティチャレンジ2025」によって、業界全体で交通事故防止への気運を高める活動を行う。
また会員企業に向けて、交通死亡事故受刑者による悔悟の手記「贖いの日々」を月刊の広報誌に同封するなど、ト協HPや広報誌を通じて日々対策を発信。アルコール検知器導入助成も実施している。
「とにかく日々の積み重ねが大切。元々、意識が高い事業者に対しても、啓発は続けていく」と同部の林憲一次長。林次長と小出調査役は改めて、「自分が飲酒運転をしないのは当たり前。他人にもさせないという意識が大事」と語気を強める。
事故から4年。失われた命の重さを決して風化させないために、千葉ト協の飲酒運転根絶に向けた取り組みは、これからも続いていく。
