キリングループロジ小林社長 「物流で事業価値を高める」

1992年にキリンビールに入社後、長らく物流部門に携わってきた小林信弥氏。キリングループロジスティクス(KGL、東京都中野区)では常務として歴代社長のサポートをし、KGLの業務全体に深く関りを持った。今年4月に新社長に就任した同氏にこれまでの取り組みや、今後の課題について話を聞いた。
2020年にキリングループロジスティクスに常務として入社すると、物流管理部長や輸配送戦略部長を歴任した。
入社した2020年ごろは、KGLは物流危機のさなかで、グループ会社の荷物を運ぶのにも対応が難しい時期だった。
小林社長は「5年間は自分たちの仕事がいかに世の中のためになっているか、グループのなかで重要なのかを社員に伝え、浸透させる期間だった」とし、「加えてコロナがきっかけで、物流の重要性が再認識されるようになったことで、社員もモチベーションが上がった」と振り返る。
この間に、「運びきる」という目標を掲げ、2024年問題への対応として運賃改定やモーダルシフト・中継拠点で貨物を積み替えるバウンド輸送を実行する一方で、人材育成にも力を入れた。
今年からはキリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンのグループ荷主企業とともに荷待ち・荷役時間を削減するため、車両動態管理予約システムを活用し、受注・需給業務改善に向け、すべての支社で全国の受注が行える仕組みの受注業務エリアフリーを計画している。
受注業務エリアフリーの実施は効率化だけではなく、災害時や緊急時に情報を共有して対応するなど、BCP対策も兼ねているという。
同社には運輸事業を担い、トラック約300台を有するケーエルサービスというグループ会社がある。今後、ドライバー不足で車両の確保が難しくなる可能性もあるため、同社の車両を増やし、対応していく。
現在、こうした物流アセットを企業間で共有しようという流れがあるが、「荷主企業や物流事業者が各々で物流を最適化しているなか、その過程で各論を乗り越える必要がある」という同社長。
同社と取引のある協力会社の規模は多様だ。
「さまざまな協力会社と連携している。現時点の運賃のほか、取引条件は地域性の違いはあるものの、同一エリア内では一律の設定。今後は、貨物の特性や地域性、また協力会社の安全品質への取り組み状況などを鑑みた条件設定なども必要」と説明。取引の実態が一社集中か複数分散なのか、安全品質課題への取り組み、経営後継者の課題などを踏まえて協力会社と対話をしていくことが最も重要なことだという。
「2024年問題により、トラック不足が将来的にも継続するなか、大切な協力会社との取引をしっかりと継続しながら、荷量にあわせたトラックの数の適正化も検討する必要がある。自社や協力会社ともに、ドライバーの確保は決して容易ではない。協力会社の後継者育成などの悩みも話してもらえる環境づくりを行っていきたい」としている。
特定荷主企業には26年度に物流統括責任者(CLO)を選任することが義務付けられているが、同社のグループの荷主企業は特定荷主に該当する。
同社長は、「グループ会社だからこそ議論できる立場だと思っている」とし、「CLOは今後の物流を左右していく重要なポストで、目配りや気配りができる人が適任になってくるのではないか」とし、CLOの選任に対しては、同社としても要望をしていくとしている。
「KGLでは今後、『運びきる』を超えて、物流で事業価値を高めていくこと、付加価値をつけていかなくてはならない」と話す同社長は、「最終的には、グループに資する、グループに貢献していくこと、グループの生産性に貢献することが、われわれの最大の目標」と位置付けている。
◎関連リンク→ キリングループロジスティクス株式会社