M&Aによる事業継続 萩原運輸と根本運送の成功例
経営者である以上、会社を承継し、継続させていくことは大きな目標の一つだといえるが、事業承継は決して容易ではない。中小企業が大半を占める運送業界では、経営者自身の子息に事業を承継させるケースが圧倒的に多いが、子息が別の仕事に就き、継がないケースも徐々に増えてきている。こうした中、会社を他人に譲る、いわゆるM&Aによって事業を継続させるケースが目立ってきた。後継者がおらず将来に不安を抱える中、荷主と従業員を守るため、M&Aを決断、経営者は変わったが相乗効果で業績を伸ばしている、そんな事例を取材した。
千葉県香取郡多古町に本社を置く萩原運輸は、1980年4月に社長であった萩原静氏(写真左)によって設立された。トラック1台からスタートした同社は、1987年4月に営業ナンバーを取得、地元の野菜など農産物の輸送を手掛けてきた。
荷主の絶大な信頼を得ていた同社は、順調に業績を伸ばし、経営は安定していたという。
それから35年以上、農産物の輸送に従事してきた。社長はもとよりドライバーも全員経験が長く、農産物輸送のプロといわれるまでに成長していた。
しかし、そんな同社にも課題がでてきた。後継者問題である。60歳で跡取りに譲り、身を引く考えでいた萩原氏は、後継者がいない現状を憂慮していた。
会社は経営も安定し何の問題もなかったが、それだけが引っ掛かっていた。
荷主とドライバーのことを考えると、会社を他人に譲ることも視野に入れなければいけない。萩原氏は5、6年前からそんなことを考え始めたという。
そして1昨年2019年10月、仲介会社を介して根本運送(根本勝雄社長=同右、同香取市)に出会った。仲介会社は数社の候補を挙げてきたが、その中に同社も入っていた。
萩原氏によると、「お互いに知ってはいたが、仕事のつながりはなかった」という両者だったが、同じ地元で農産物を扱っており、そして何より会社の規模を考えると、根本運送以外になかった。同社と出会ってから4か月後の翌2020年2月、萩原運送は根本グループの一員として再スタートを切ることになる。
根本社長によると、2019年10月に萩原運輸と出会ってから、グループ化への準備を進めることになったが、萩原運輸が他の会社になるという事実を、いかにドライバーに理解してもらい、スムーズに仕事を継続できるか、そこに注力する必要があったという。
根本社長と萩原氏が協力した結果、M&Aは粛々と遂行された。残念ながらドライバー一人は去ったが、それ以外は問題なく、グループ化への移行が行われた。
萩原氏は同社の顧問に就任する一方、仕事に対しては、社長時代と変わらず、荷主との交渉やドライバーとの交流を行うなど、重要な役割を果たしている。
特に荷主にとっては、将来的な不安が取り除かれたこともあり、「大変喜んでくれた」という。
グループに加わって1年半が過ぎるが、コロナ禍の中、トラックは2台増え、さらに今後1台増える予定で、事業は拡大路線を歩むようになってきたという。
顧問に就任した萩原氏は、将来的に後継へバトンタッチするための準備を進めているという。「これまで相談できる相手がおらず、相談できるところもなかった」というが、根本グループに入ったことで、「いろいろと相談できる相手もできた。何でも自分で決めなければいけなかったことが、今は相談しながら決められる」とし、「肩の荷が一気に下りた」と話している。
根本社長は、「萩原顧問以下、萩原運輸がこれまでしっかりとした仕事をしていたからこそ、顧客の理解を得て、M&Aがうまく進んだ」と振り返る。
相乗効果で事業を伸ばす萩原運輸の姿に、M&A成功の秘訣が伺える。
◎関連リンク→ 株式会社根本運送
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