1943年に発足した磐城通運(福島県いわき市)。鉄道輸送はもちろん、小名浜港からの石炭輸送も得意としている。グリーン経営認証やGマークに加え、「働きやすい職場認証」一つ星を取得するなど、環境や安全、労働環境改善への取り組みに積極的だ。2024年問題など課題が山積する物流業界をどう生き抜くか――。鈴木孝雄社長(写真中央)に話を聞いた。

今年は同社にとって創立80周年の節目を迎えるメモリアルイヤー。昨年7月に社長に就任した鈴木氏は、「創業者から数えて6代目となる。おかげさまで成長させていただいている」とはにかむ。

同社では、ドライバー1人が車両1台を担当する1人1車制を採用。「合理的とは言えない面もあるが、メリットも大いにある」という。

1つは車両管理の面で、北郷秀一常務(同右)は、「稼働状況や売り上げ、燃費などが分かり易く、把握しやすい」と説明。もう1つはドライバーに関する面。「自分の車両となれば愛着が湧き、大事にする。ドライバー自身が車両のメンテナンスや燃費向上に積極的に取り組むことも利点」

 

ドライバー不足が叫ばれる昨今、同社も例外ではない様子。「やはり年々、採用が難しくなってきている。近年はハローワークだけでなく、SNSなどインターネットも活用している」と同社長は話す。

 

ドライバーの平均年齢は40代後半。阿部清勝総務部長(同左)は、「採用活動はもちろん頑張っているが、パイが増えるわけではない。若手の奪い合いになっている」とこぼす。

 

このため、同社では未経験者や女性ドライバーを積極採用。「OJTや座学、2マン運行など日数をかけて教育に力を入れている」とし、「育児などで残業不可というドライバーにもいわばフレックスのように柔軟に対応し、働きやすい環境を整備している」と語る。

 

迫る2024年問題については、「ダブルパンチ」と苦笑する同社長。「ただでさえ労働力不足なのに、1人あたりの働く時間が抑制され、ドライバー側も手取りが減る。それを運賃に反映できるか、荷主との交渉はもちろん、さらにコストを切り詰めていくしかない」

 

「法令を順守する上でも、ドライバーの時間管理など、荷主の協力は不可欠」と語る同社長。「運賃交渉は悩むこともあるが、荷主側から『大変だろうから運賃上げるよ』と言ってくださることもある。これまでの信頼関係、日々の積み重ねの賜物」と目を細める。

 

環境に対する取り組みにも積極的な同社。月に1度、社内で環境問題対策委員会を開いている。同社長は、「運送会社としてカーボンニュートラルに貢献できることは何かを常に考えている」と話す。

 

一方で、現時点では車両をEVやFCVに置き換えることには静観の構え。「中距離がメインの当社ではEVの航続距離では足りず、FCVではインフラ整備や初期費用の面で心配が残る。やはりまだ過渡期。燃料高騰や人手不足など先が見えない中で、今ある設備を大切にしていきたい」
2022年度「エコドライブ活動コンクール」では、事業部門の最高賞である国交大臣賞を東北で初めて受賞した同社。鈴木社長は、「これからも地道にコツコツと業務にまい進したい」と語る。

 

◎関連リンク→ 磐城通運株式会社