厚労省が公表した「自動車運転者を使用するトラック事業場に対して行った2023年の監督指導(立入調査)、送検等の状況」によると、全体の8割に労働基準関係法令違反が認められ、主な違反事項の中で「労働時間」の違反が最も多かったことが分かった。4月に改善基準告示が適用され、労働時間に対する監督指導が重点的に行われているようだが、「労働時間」の違反については、ここ数年で大きくなった問題ではなく以前から続いている。

 

自動車運転者を使用するトラック事業場に対して行った「2023年の監督指導の状況」では、トラックの労働基準関係法令違反は監督指導を実施した2928事業場のうち、81.6%に当たる2389事業場で、主な違反事項は「労働時間」が48.0%の1405事業場だった。

 

改善基準告示違反があったのは監督指導を実施した2928事業場のうち、58.3%に当たる1706事業場で、主な違反事項は「総拘束時間」が33.4%の979事業場、「最大拘束時間」が43.3%の1269事業場、「休息期間」が32.5%の952事業場、「最大運転時間」が21.4%の628事業場、「連続運転時間」が29.7%の871事業場だった。

 

監督指導が実施される事業場(場所)は、労働基準関係法令に関する情報提供などがあった事業場が対象となっており、令和5年は2928の事業場で監督指導を実施した。監督指導とは、労働基準監督署の職員が話を聞きにいくという形で行われている。

監督指導の事例については、一部公表されているが、全体の事例から受ける印象について、厚労省労働基準局監督課は「ここ数年で生じている問題ではないが、労働時間の関係になると、荷主との兼ね合いもあって、トラック事業者が単独で改善できずに法令違反となっているケースも少なくないのではないか」とみている。

 

このように長時間労働の要因には、取引慣行など個々の事業主の努力だけでは見直すことが困難なものがあるため、2022年12月に都道府県労働局の「荷主特別対策チーム」が編成され、国交省のトラックGメンなどと連携しながら、発着荷主等に対して要請と働きかけを行っている。

 

一方、自動車運転者を使用するトラック事業場に対して行った「2023年の送検状況」では、重大・悪質な労働基準関係法令違反が認められた事案として送検した件数は45件で、21年の32件から増加している。23年の送検状況から送検法条文の内訳は多いほうから、労働時間(労働基準法第32条)、安全基準(労働安全衛生法第20条)、最低賃金の効力(最低賃金法第4条)となっている。

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