今年5月に交付された物流関連2法(流通業務総合効率化法と貨物自動車運送事業法)。「流通業務総合効率化法」では、荷主や物流事業者間の商習慣の見直しを行い、荷待ちや荷役時間の削減や積載率の向上を図ることを目的とし、一定規模以上の事業者には中期計画の作成や定期報告等、そして荷主には物流統括管理者(CLO)の選任を義務付けている。

 

物流向けアプリケーション開発・販売、コンサルティングを行うHacobu(佐々木太郎社長、東京都港区)でCSOを務める佐藤健次氏は、長らくグローバルサプライチェーンに携わってきた。今回義務付けされる物流統括管理者について「物流について真剣に考え、悩んできた人たちにとってCLOは求めていた存在ではないだろうか」と指摘する。

 

佐藤氏は、コンサルタントを経て、ウォルマートジャパン/西友で物流の責任者を務めた。コンサルタント時代にグローバルサプライチェーンを担当したことをきっかけに、長年、物流業界の課題と向き合ってきたのだという。

その経験から、海外と比較し「日本は国土も狭く、日本独自のルールや商習慣ができてしまっている」と指摘。特に、在庫管理については「『欠品は悪』という考えがまだまだあるように見える。欠品に対処するために、1つの荷物もしくは少ない荷物のためにトラックを出すと莫大なコストがかかる。その欠品のために、どれほど売り上げを伸ばさなくてはならないのか」とし、「宅配などBtoCの現場で起こっていた再配達の問題と似たことがBtoBの現場で起こっている。適正な欠品は許容しなくてはならない」と話す。

 

また、「海外ではトラックの荷物にドライバーが触れることはご法度。日本ではドライバーが『いい人』であったこともあり、荷役に関係してきたことが現在の問題にもつながっている。外国人ドライバーが、今後、日本でも見られるようになると、グローバルの常識を適用していかなくてはならないのかもしれない」と指摘する。

 

その上で、今回の物流統括管理者(CLO)は、「投資に対してどれくらいの回収ができるのかを理論的に考える立場。売り上げに対して物流はコストだというが、売り上げが伸びれば物流というコストも上げていいはず。事業再編やドライバー不足を含め、社会最適のために、どう今の商慣習を変えていくか。そこまでできれば、ドライバーに対して正しい賃金を支払うことができるようになる」とし、「値上げ交渉だけではなく、構造そのものを変えていくことが今の日本に求められていることではないか。そこまで考えてロジスティクスでやっていくことが必要」と話す。

同社では荷主企業の物流責任者を募り「未来の物流共創会議」を開催。同氏は、「経営のなかできちんと物流を語っていく人材を確立し、経営の優先順位を含め、他の企業と協業を議論する人材が各企業にいてほしいというのが今回の改正が求めていることではないか」と話している。

 

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