引越事業は例年、3月から4月にかけて依頼が集中する。いわゆる引越し繁忙期だが、今年は「2024年問題」という課題も直面し、「引越業界全体に影響が生じる可能性が高い」と予想されていた。引越し繁忙期に生じる問題では、引越業者が労働力不足で依頼に対応できないことが1番大きな問題だとされている。2024年の繁忙期ではどのような影響が生じたのか、全国143社の引越業者を対象に実施された実態調査から分析を行った。

リベロ(鹿島秀俊社長、東京都港区)が5月中旬~6月上旬に実施した「2024年春の引越し繁忙期実態調査(147社中、回答66社)」によると、3月~4月の引越しの受付・受注件数は、昨年に比べて、16.7%が「とても増えた(120%以上)」、45.5%が「増えた(101~119%)」、21.2%が「変わらない(100%)」と回答。

 

一方、受注後のキャンセル件数(お客様からのキャンセル数)は、昨年に比べて、47%が「変わらない(100%)」、25.8%が「減った(81~99%)」、18.2%が「とても減った(80%以下)」と回答。引越しの問い合わせに対する引越業者の「お断り率」は、40.9%が「1~10%」、21.2%が「21~30%」、16.7%が「11~20%」と回答した。

 

また、成約単価については前年と比べて、56.1%が「上がった(101~119%)」、24.2%が「変わらない(100%)」、12.1%が「下がった(81~99%以下)」と回答。「上がった」と「とても上がった」と回答している引越業者が63.7%と6割を超えており、価格が高騰していることがわかった。

 

1番大きな問題だとされている労働力不足については、繁忙期に「ドライバー」の人数は対応件数に対し十分に確保できたかとの質問に、45.5%が「できていた」、43.9%が「できていなかった」と回答。地域差などで違いはあるが、ほぼ拮抗した回答結果となった。

 

今回の調査結果を引越業者とともに分析したところ、成約単価の上昇については、資材や燃料高騰もあり実質値上げになっているが、閑散期は、これまでの価格競争の影響もあり値下げされることが予想される。

 

価格の高騰分は、人材の確保や維持の為に使われるが、高騰した原価及び閑散期の収益補填の為にも使われるようだ。ドライバーの賃金を上げることができるので、人材募集もしやすくなるが、これだけで「労働力不足が解消される」ことはないとしている。

 

調査では、ドライバーの人数は対応件数に対して「確保できていた」と「確保できていなかった」との回答が拮抗したが、「確保できていた」理由について引越業者は「インセンティブを付与した」(大阪府)、「早期に採用を増やし、繁忙期までに余裕をもって作業を習得できるように行ったから」(北海道)としている。

 

一方、「できていなかった」理由については、「昨年11月から2~3社に募集かけたが、一件も問い合わせがこなかった」(北海道)、「派遣ドライバーを4人入れたが1人しか残らなかった」(千葉県)としており、引越業者の多くは、新たに採用するよりも既にいる人材の定着率を高めることに力を入れている。

 

今年は暦の影響で3月末に引越しが集中したこともあって、引越時期は今年も分散されなかった。引越し繁忙期に生じる問題の解決は簡単ではないことが改めて分かった。

 

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