トラック事業者にとって、トラックドライバーは事業を行う上で無くてならない存在で、会社にとって一番大事なもの。ドライバーをはじめとする社員の健康を守ることは、会社を守るということでもある。

事業用貨物自動車の交通事故の原因で多いのは健康起因事故だが、事故の発生件数は年々、減少傾向にある。だが、交通事故が起きずとも、ドライバーが病気になれば仕事が回らなくなり、取引先との信頼関係にも影響が出る。

24年問題の時間外労働の制限というものも健康に起因する取り組みであることから、社員の健康を守る取り組みにも力を入れるべきだが、そもそもドライバーを確保しておくためには、適正運賃の収受が優先されるべき取り組みとなっている。

「健康管理には費用がかかる。会社にとって負担が無いわけではないが、健康管理の取り組みをせずに社員が病気になってしまって仕事ができなくなる状況になる方が、会社にとって最もマイナスなこと」として、会社独自の健康経営に取り組んでいるトラック事業者がある。

首都圏の7社10営業所で物流サービスを提供しているロンドグループでは、2024年問題への対応策として、2年前からグループ独自の健康経営に取り組んでいる。22年に、がん検査キット「線虫N―NOZE(エヌノーズ)」による検査を全社員に実施。

翌23年には、MRIを持っている総合クリニックと法人契約を締結し、全社員に「脳ドック」を受診させ、脳血管疾患の早期発見に努めた。今年は第三弾として、全事業所にポータブルの心電計を導入し、全社員とその家族が心疾患の早期治療に役立てられるようにした。

グループの中核企業である論渡物流(東京都江戸川区)の向野祐司社長(写真右)は、「ベテランドライバーを中心に病院嫌いが多く、多少何かあっても問題にしないが、年齢とともに病気になるリスクが高まり、病気にかかってからでは遅いので、健康管理に取り組むようになった」としている。

「会社の負担は小さくはないので、多少なりとも経営を圧迫していますが、ドライバーをはじめとする社員がいなければ経営どころではなくなる」とし、「2024年問題の対応策として、また、会社の経営を継続していくためにも、社員の健康管理は後回しにできない」という考えで力を入れている。

ロンドグループの経営者会議においても、健康管理は常に重要議題の一つとなっており、今回の心電計の導入はグループ会社のエフティ物流(千葉県佐倉市)の藤本明広社長(同左)が提案して採用されている。

藤本社長は「当グループでは、点呼時に血圧を測るのと同じように心電図も測るようにしていくことで健康管理を強化していきたい」としており、「会社が負担することで、社員の精神的な安心につながり、健康に対する意識改革にもなる」としている。

同グループの健康管理の取り組みについては、ドライバーをはじめとする社員からの評判は良く、健康への意識も高まっている。また、同業他社にも、同グループの健康管理の取り組みに影響された事業者もあり、健康管理の取り組みも注目されている。

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