交通事故防止コンサルタントの上西一美です。「2024年問題」対策の1つに「高速道路での制限速度の引き上げ」があります。従来の時速80キロ制限から90キロへの引き上げで、効率化を図ろうということですが…。今のところ、弊社の顧問先では、社内ルールで上限を引き上げるという選択肢を選んだ企業はなく、従来のままです。

私もYahoo! ニュースで公式コメントしましたが、これが2024年問題対策に有効なのか非常に疑問です。その理由は、やはり事故のリスクが高まることです。本来、運転者のための「2024年問題」のはずが、その運転者のリスクを上げるということは、違和感しか感じません。

当然ですが、万一、事故を起こした場合の死亡率は上がります。特に、重量があるトラックは、相手だけではなく、運転者自身も死亡するリスクが高まります。時速80キロでの停止距離の目安が約76mに対して、90キロでは93mまで伸びます。これも事故に至るリスクへつながります。

さらに、弊社クライアントがされた燃費の試算では、なんと燃料費が8%も上昇したそうです。ということは、1000万円の燃料費に対して80万円も経費が上がります。「2024年問題」では、売り上げを伸ばしつつ、経費を抑えていかないと、運転者の賃金を維持できません。そんな状況下で、この速度の上限引き上げは本当に有効なのでしょうか? 慎重な議論を行い、対策を講じてほしいものです。