【質問】2021年度の始まりにあたり、法施行等の動向を見て、中小運送会社がまずチェックすべき取組課題があれば教えてください。

 

2021年4月からパートタイム有期雇用労働法が中小企業にも適用になりました。同一労働同一賃金に向けた取り組みが未実施の会社は、今後訴訟を起こされて損害賠償を請求されるリスクが極めて高くなります。本来は3月までに対策を準備しておくべきですが、対策が未了の会社は今からでも遅くないので社内制度を点検し整備しておくべきでしょう。

全日本トラック協会のホームページ内に「トラック運送事業者のための同一労働同一賃金の手引き」とその解説動画(二部講師は小山)が掲載されていますので、運送会社が具体的に何をすればよいのかを再確認し、早期に対策を完了してください。次に、最低賃金については、前回の改定時(2020・10月)はコロナの影響で横這い又は微増にとどまりましたが、先日「より早期に平均1000円の目標を達成する」との方針が示されましたので、今年度から再び最低賃金の大幅な上昇が復活する可能性があります。最低賃金割れは、過去に訴求して是正を命じられ、数百万円を支払った運送会社もあります。特に最低賃金の計算に含まれない「家族手当」「皆勤手当」「通勤手当」などの手当や固定残業代などを支給している会社は法定の計算で不足がないかを再検証し、必要に応じて賃金制度の見直しを検討するとよいでしょう。

また、年次有給休暇の5日間取得義務化については、法施行後すでに2年を経過して、一定程度浸透しておりますが、未だに一部の運送会社では不十分な状況が見られます。特に短時間労働者であっても、例えば、週4日の社員は勤続3年6か月、週3日の社員は勤続5年6か月を過ぎると有給取得義務化の対象者となりますので注意してください。法施行後2年を経過して、今年度は労基署の臨検等で実態を確認される可能性が高いため、要注意です。併せて有給取得時の賃金については、特に歩合給の場合に計算相違が散見されるので、法定の計算式を再確認して間違いがないか点検してください。

また有給の賃金計算において、固定給の場合は「通常の賃金」を使用する会社が大半ですが、歩合給の場合は社員の公平感や計算の簡素化を重視して「標準報酬日額」を使用する会社もあるので、自社の実態に応じてメリデメを再検討しておくとよいでしょう。

 

(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)