法改正による変更点

令和元年12月1日から「ながらスマホ」の罰則が強化されたことは皆さん、ご存じのとおりと思いますが、変更の内容をもう一度おさらいしてみましょう。

交通の危険(スマホ中の交通事故)

~令和元年 11月30日
罰則 3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
反則金 大型12,000円、中型9,000円、原付6,000円
基礎点数 2点
令和元年 12月1日~
罰則 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
反則金 適用なし
基礎点数 6点

保持(ながらスマホ)

~令和元年 11月30日
罰則 5万円以下の罰金
反則金 大型7,000円、普通6,000円、原付5,000円
基礎点数 1点
令和元年 12月1日~
罰則 6ヶ月以下の懲役又は10万円以下の罰金
反則金 大型25,000円、普通18,000円、原付12,000円
基礎点数 3点

いかがでしょうか。法改正の前後では全く異なる罰則であることがよくお分かりのことと思います。特に大きな変更点は、スマホ中の事故は一発免停になったということですね。また、ながらスマホの反則金が点数が3倍となり、反則金も3倍以上となったこと、スマホ中の交通事故での反則金がなくなり、懲役又は罰金のみとなったことも大きな変更点です。スマホ中の交通事故において、反則金の適用がなくなったということは、いきなり、懲役又は罰金という前科対象となる事件に変更されたことですね。ところで、反則金と罰金の違いはご存知でしょうか。簡単に言えば、青切符が反則金、赤切符が罰金ということなります。ただし、青切符も反則金を支払わず、裁判で罰金が確定すれば、前科になり得ますので、注意しましょう。今回の改定では、スマホ中の交通事故は、反則金を支払えば前科とならない告知制度が適用されず、いきなり、赤切符による罰金の対象と変更されたということです。

実際の取締り件数

1位 最高速度違反 148万件
2位 一時停止違反 133万件
3位 携帯電話使用等違反 92万件
4位 通行禁止違反 73万件
5位 信号無視 73万件
6位 駐停車違反 24万件
7位 追越し通行区分違反 23万件
8位 踏切不停止等 9万件
9位 免許不携帯 6万件
10位 酒酔い・酒気帯び運転 3万件

「ながらスマホ」の取締り件数は、交通違反の中でも第3位にランキングするメジャーな違反であり、警察の関心も高いことが分かります。取締り件数が世論の関心や支持と必ずしも一致するとは限りませんが、これだけ「ながらスマホ」を原因とする事故がマスコミに取りざたされ、実際に悲惨な事故が起きている以上、取締りを強化する大義名分がないとは言えません。今回の改定では、スマホ中の交通事故は、反則金を支払えば前科とならない告知制度が適用されず、いきなり、赤切符による罰金の対象と変更されたということです。

事業主としての対策

ドライブレコーダーの搭載

車内に取り付けられた稼働中のドライブレコーダーの写真

ドライブレコーダーは車両前面の画像のみでなく、車両後方や室内まで撮影する複数カメラタイプの機種が主流となっています。また、最近メディアで紹介されている機種(複数あり)は、AI機能により運転中の「ながらスマホ」をその場で検知し、ドライバーにリアルタイムで警告する機能が備わっていることから、現在注目を浴びています。このような機種は、Web上の画面で任意の時間帯の画像も確認が可能であるなど、より徹底された安全管理が可能になることでしょう。

就業規則の整備

書類と判子の写真

ドライバーの服務規定に「ながらスマホ」の禁止を規定することは当然ですが、懲戒事由にも同様に規定すべきでしょう。「ながらスマホ」が社会問題としてこれだけ大きくフォーカスされている背景には、運転中の「ながらスマホ」には、一部のドライバーの運転中のお手軽な娯楽として深く根付いている現実があります。ドライバー個人の意思では、なかなか止めることができない難しい理由があることからすれば、事業主側の管理体制の在り方も求められていくことでしょう。

著者紹介

一般社団法人運輸安全総研トラバス代表理事・行政書士法人シグマ代表 阪本 浩毅氏

阪本 浩毅(さかもと ひろき)

一般社団法人運輸安全総研トラバス代表理事・行政書士法人シグマ代表


大学を卒業後、大手旅行会社に就職。修学旅行などの教育旅行の企画・営業に従事。旅行会社在職中にコンプライアンスの重要性に気づき、法律家を目指すために退職。退職後は、都内の司法書士法人・行政書士法人にて、企業法務に従事する。行政書士開業後、個人事務所時代から一貫して、運輸業と観光業専門の行政書士として、数多くの一般貨物自動車運送事業・貨物利用運送事業・倉庫業・一般貸切旅客自動車運送事業などの運輸業に関する許認可法務に関与してきた経験を持つ。現在も行政書士法人シグマの代表として、運輸業と観光業の許認可の専門家として活動している。