アメリカン・エキスプレス(以下、アメックス)は11月30日、「2030年を見据えた運送企業の勝ち残り戦略」と題した運送会社向けの経営セミナーを開催した。

 

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第1部は、船井総研ロジ 物流ビジネスコンサルティング部 シニアコンサルタントの齊藤史織氏が、「物流業界を取り巻く課題とこれからの勝ち残り戦略」をテーマに講演。

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これから「勝ち残る」企業とは

 

人が集まる企業と、集まらずに高齢化が進み、仕事を失っていく企業。今後はますます二極化が進んでいくことが考えられます。低収益で倒産してしまう企業もさらに増えていくでしょう。2024年からは、年960時間の時間外労働の上限規制が適用となります。こうした状況の中で、勝ち残る企業として挙げられるのは、やはりDX・デジタル化を推進している会社です。

 

DXは、守り=業務効率アップの「デジタルマネジメント」と、攻め=売上アップの「デジタルマーケティング」に分けられます。「守り」のDXで大切なのが、そもそもデジタルでの収支管理ができているかどうか。売上の数字だけでは足りません。KPIの評価ツールなどを使い、指標となる数字を日次で見て、スピード感を持って対処していくことが大切です。

 

その上で「攻め」、つまり新規荷主の獲得体制をデジタルに構築していくこと。荷主の担当者が運送会社を探す場合、必ずネットを利用します。「東京 千代田区 運送会社」などのワードでヒットしなければ、それだけで機会損失と言えるのです。ホームページの強化は必須と言えるでしょう。

 

 

さらに、倒産や未収リスクに備えた与信調査の簡略化、配車システムなどによる生産性・積載率・稼働率の可視化、請求書発行の自動化、企業間カード決済システムの導入など、プロセス別にDX化を検討する必要があります。

 

かつて、経営に必要なのは「人・モノ・金」と言われましたが、今はとにかく「人」の時代です。人を生かして生産性を上げる。そのために必要なのがDXです。全ての業務の中身を分析するために、まずはデータ化が必須です。

 

 

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第2部は、アメリカン・エキスプレス加盟店事業部門 事業戦略本部の平野進本部長が「取引先の信用不安を解決する企業間カード決済」と題し、同社のサービスを紹介。

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年々高まるキャッシュレス決済比率

 

国内のキャッシュレス決済比率は右肩上がりに上がっていて、2022年時点でBtoCは36%、BtoBは12.5%となっています。※1  BtoBは今も銀行振込が主流で、BtoCに比べると少ない比率になっていますが、企業間決済で主流の銀行振込から法人向けのビジネスカード払いへの切り替えも進んでいます。

 

当社の企業間カード決済も建設・建築、医療、食品、農業、美容など、さまざまな業界で活用されています。カード決済というと出張費や接待費、交際費のイメージがあるかもしれませんが、実は、仕入れの部分でもカード決済が進んでいます。当社は「FUJI」という決済システムを提供しています。例えば、売り手側の運送会社様に加盟店契約いただき、FUJIを導入いただくことで、これまでの通常の業務を大きく変えることなく、請求書払いをカード決済へ転換し、業務効率化に活用いただけます。※2

 

建設業界ではネジなどの資材やトラクター、ショベルカーの購入、農業では餌の仕入れなどで使われています。物流業界でも、荷主企業様がカード決済できる仕組みを導入する運送会社様も増えてきています。

 

企業間決済の悩み「未回収」「与信への不安」「キャッシュフロー」

 

 

当社が行った企業間決済に関する調査によると、支払いを受ける側では「これまでにクライアントから発生した支払い遅延のうち、21.6%が未回収である」という結果が出ました。未回収と結論づけるまでには営業担当や経理が何度も電話をする必要があり、時間的にも心理的にも大きな負担がかかります。

 

また、支払いを受ける側の約半数の方が「取引を開始する際、与信審査で課題を感じたことがある」と回答しました。さらに、取引先へ支払いをする際に同じく約半数の方が、自社の資金繰りやキャッシュフローに課題を感じていることもわかりました。

 

当社の企業間カード決済は、売り手(運送会社様)と買い手(荷主企業様)の間に入ることで、これらの課題を円滑に解決していくことを目指しています。前述したような仕入れの部分で使っていただけているのは、これらのメリットを理解していただいている結果と言えるでしょう。

 

 

ある国際・国内輸送会社様では、荷主企業の貸し倒れに対する、与信を強化するため、当社と加盟店契約を締結しました。取引先が海外の場合、コミュニケーションの面で回収が難しいケースがでてきますが、FUJIはウェブブラウザ上から専用サイトで取引が行えるため、請求が承認されれば「ボタン一つ」で支払いが保全されます。

 

このケースでは、輸送会社様(加盟店)、荷主企業様(カード会員)、当社の間で、Win-Win-Winの関係が構築できたと言えます。輸送会社様の顧客にあたる荷主企業様に法人カードを持っていただくには、当社で審査を行います。カード会員になっていただけるということは、つまり、輸送会社様にとって「安心して取引を開始できる」という判断になり、信用不安の問題に活用いただけます。

 

一方、荷主企業様にとっても、カード支払いにすることで、支払日まで余裕が生まれます。また、クレジットカードのポイントが貯まるというメリットは、輸送会社様と荷主企業様との円滑な関係性構築にも寄与するでしょう。

 

このように、企業間カード決済は運送会社様、荷主企業様、双方の課題解決に貢献します。

 

<<運送会社 (加盟店) のメリット>>

・与信審査・管理の手間とコストを削減

・売掛金回収のリスクと手間を軽減

・キャッシュフローの安定化

・既存顧客の満足度向上

・新規顧客獲得

 

<<荷主企業 (カード会員) のメリット>>

・経理処理の簡素化・手間軽減

・コストの一元管理

・キャッシュフローの改善(支払い期間の延長)

・入金漏れや遅れの回避

・ポイントプログラム

 

こうしたメリットは顧客満足の向上や、新規顧客獲得の面でも強みとなります。「FUJI」の導入に初期投資は不要です。コストとして加盟店手数料が発生しますが、メリットを考えてもバリューとして考えられるでしょう。

 

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第3部は齊藤氏、平野氏に加え、ドライバー専門求人サイト「ドラEVER」取締役の渡海克利営業部長が登壇。パネルディスカッションを行い、同社の成功事例などについて話した。

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齊藤:ドラEVERさんはアメックスと加盟店契約を結び、広告掲載料の支払いに企業間カード決済を導入しているそうですね。導入で解決できたことはありますか。

 

渡海:アメックスさんを導入することで、与信審査が自動的に行われます。自社の与信とダブルチェックできるので安心ですね。企業によっては与信を自社では行えないというところもあるので、審査を外注することで、取引をスムーズに行うことができます。

 

平野:与信審査は厳しく行っています。一つの判断基準として、当社の審査だけで取引を開始するという企業様もいらっしゃいます。

 

渡海:顧客満足度の向上にもつながっています。たとえば、当社の顧客である三郷市の運送会社では、当社への支払い以外に、トラックパーツの購入や優待でも法人カードを活用。ポイントが貯まり、「社員に還元ができる」と喜んでいただけています。利用履歴も残るので経費管理の簡素化、銀行振り込みの手間の削減にもつながったとご評価いただきました。

 

顧客満足度の向上と新規顧客開拓

 

渡海: 広告を掲載していただく際にカード決済を選んでいただいた場合、継続するかどうかの検討時に、他の媒体と比べてメリットを感じてもらえることが多いですね。離脱を防ぎ、顧客との強い結びつきができるのを実感しています。お客様の側からも「支払い期間を延長できて便利」「キャッシュフローの改善につながる」という声をいただいています。

 

また、運送会社は特に口コミの影響が大きいので、カード会員からの紹介で新規顧客の開拓につながることもあります。カード決済ができる求人媒体は他にないので、選定の際にポイントになります。物流会社であれば、発注者にも受注者にもなるのが特徴ですよね。もし企業間カード決済を導入すれば大きなメリットが生まれ、特徴的なイメージが付くのではないかと思います。

 

平野:「与信審査・管理の手間軽減」「顧客満足度の向上」「キャッシュフローの改善」などのメリットに加え、「ポイントが貯まる」といううれしさもカードならではと言えるでしょう。ポイントが貯まることで、深層心理では支払いのハードルが低くなり、円滑な支払いに寄与しているのではないかと思っています。

 

齊藤:私は月に30〜40社の運送会社を訪問していますが、信用不安をリスクに感じ、営業面で攻めきれていない会社が多いと感じます。企業間カード決済をきっかけに、事業拡大のエンジンにしていただくといいのではないでしょうか。

 

※ 1 : 出典
• BtoC 決済比率 36.0% : 経済産業省「2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました」(2023年4月6日)
• BtoB 導入率 12.5% : 経済産業省「キャッシュレス決済実態調査」(2021年)
※2:「加盟店」とは、アメックスと契約し、アメックスのオンライン請求システムを通じて商品やサービスを販売する許可を得た法人・個人事業主のこと。
【アメックスの企業間決済サービス 】
【取材協力:アメリカン・エキスプレス】