第227回:令和時代の運送業経営 労務トラブル実例編(22)
【労務トラブル実事例編】㉒
「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウイルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。
今回も前号に続き運送会社で実際に発生した「労務トラブル実事例」とその対応策について説明してまいります。
1.労務トラブル実事例
⑴トラブル内容
神奈川県所在の運送会社A社(社員数40人)は主として飲食・レストランの食材配送を行う運送会社であった。同社は昨年の協会・適正化による巡回監査で「点呼」「教育」および「車両配置の適正化」が原因で「D評価」となり、陸運支局の監査対象となっており対応が急務であった。同社常務のBさん(48歳)は支局監査への対応で多忙となり、請求業務でトラブルが発生、給与計算にミスが生じるなど労務面の対応が後手後手になる状況であった。
ある日、退職したドライバーCから「離職票が届かないがどういうことだ。失業保険を受給するのが遅くなる。遅れた分の弁償をしてほしい」という連絡があった。そのドライバーは家族の病気で実家に帰るという理由の退職で、特段退職トラブルはないドライバーであった。連絡があったのは退職してからすでに4週間が経過していた頃であった。
支局の対応などに追われ離職票の発行が遅れていることに気づいた常務は、顧問社労士に連絡、社労士から「離職票の発行は雇用保険の失業等給付を受けるために必要、10日以内に離職証明書をハローワークに届け出する必要があり、違反の場合は6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金ということとなっていますね」と説明を受けて驚いた。
社労士から、加えて、「離職票がなくてもハローワークで失業給付を申請できる仮手続きの制度があります。仮手続きは、退職日から12日が経過しても離職票が手元に届かない場合に可能となり、ハローワークで求職者登録を行い、退職証明書や社会保険資格喪失書など退職日がわかる書類を持参すれば、仮手続きができます」という説明を受けて、退職ドライバーCに連絡、ハローワークの手続きに協力する旨を説明したところ、ドライバーCは一旦落ち着きを見せている。
⑵事例のポイント
トラ協・適正化監査で「D、E」評価となると支局による監査になる、とされています。支局監査になった場合、行政処分の恐れがあるため改善が必要です。
本件は支局監査の対応に追われ、ドライバーへの「離職票の発行」が遅くなりトラブルに発展した事例です。問題社員などのトラブルではなく、会社側の事務ミスによるトラブルとなります。
2.対応策
退職ドライバーは離職票を元に「求職の申し込み」を行いますが、自己都合退職の場合、給付制限期間(令和2年10月から給付制限期間が2か月に短縮されています)があり、失業給付金を受給できるまで一定の期間が必要です。
本事例のように会社側の事務ミスはあってはならないものです。このような場合は事業主としてハローワークに事情を説明の上、退職者ができるだけ不利益とならないようにする対応が求められます。
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