「エンジン止めたトラックは地獄」 真夏へ向けて熱中症対策を
猛暑が襲うなか、トラックのなかで長時間過ごすドライバーの熱中症が懸念される。待機中はエンジンを掛けずに車内で我慢を強いられているドライバーも少なくない。「エンジンを止めたトラックは地獄。タチの悪いサウナ」と口を揃えるドライバー。早めの対策が必要だ。
厚生労働省が発表した「令和3年職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によると、2021年では全体で561人(うち死亡者21人)となっており、運送業の熱中症による死傷者数は61人、このうち1人が亡くなっている。
熱中症による月別死傷者数(2017年〜2021年計)では、6月から7月にかけて急増し、8月には全体統計の半数を占める。
騒音防止やCO2排出量削減のためにアイドリングストップを行う車両も多い。
大阪市の南港近辺で待機していたトラックドライバーAさんは、「真夏の過ごし方は『我慢』やね」と半ば諦めている様子。「会社から燃料節約を心がけるように言われているけれど、死んでしまうと思うくらい暑いから無理」と吐露する。
ドライバーを経験し、現在は配車を担当しているBさん。「ドライバーをしていたので、待機するドライバーに、猛暑のなかエンジンを切れとはなかなか言えない」とした上で、「待機が多い荷主は休憩場所を設けることを義務化してほしい」と述べた。
運送会社C社では、「長距離ドライバーには待機時間や休憩中に冷房をつけるための専用のバッテリーを持たせている。エンジンを掛けずに身体を休める環境が夏場にできるかといえば不可能で、せめて涼しい環境で休んでほしい」と話す。
荷下ろしを待つドライバーに話を聞くと、「荷積みや荷下ろしの際、ほぼ日光の照らされる場所で行うので、建設業界でよく採用されている空調服を運転者にも支給してほしい」と述べた。
新型コロナウイルス感染症の影響でマスク着用が一般的になった今、熱中症リスクが高くなると言われている。
総務省消防庁は6月7日、5月30日~6月5日の1週間の熱中症による救急搬送人員数が1203人(速報値)と発表。これは前年同時期の645人(確定値)と比べると、558人多くなっていることから、より注意が必要と言える。
熱中症予防のため、水分をこまめに摂取することが推奨されている。
眠気防止などで摂取する珈琲やエナジードリンク、緑茶にはカフェインが多く含まれており、利尿作用があるため水分補給には適さないとされており、麦茶などのミネラルも同時に補給できる飲料が好ましいという。
厚生労働省では、熱中症予防・対処法などについての資料を発表。
その中には、「屋外だけでなく、室内(車内)で何もしていないときでも発症し、救急搬送されたり、場合によっては死亡することもある」とし、「熱中症について正しい知識を身につけ、体調の変化に気をつけるとともに、 周囲にも気を配り、熱中症による健康被害を防ぐ」と呼びかけている。
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