政府の成長戦略実行計画(令和2年7月17日閣議決定)における低速・小型の自動配送ロボットの社会実装に向けた遠隔監視・操作型の公道走行実証が活発化している。早ければ2021年度中にも、公道での無人配送が可能になるかもしれないが、こうした自動配送などのロボット技術は実際にどのくらいのレベルに達しているのだろうか。

物流での自動運転やドローンなどの実用化はまだまだ先の話だと思っている人は少なくないのではないだろうか。労働人口が減少するなか、宅配需要が急増し、新型コロナウイルスの影響もあって、非対面・非接触といった対応が求められている。

こうした状況で、継続的に安定した物流サービスの提供を可能にするために、先進技術を配送業務に活用することが急務となっている。だが、自動配送ロボットにおいては、現行の制度(道路運送車両法、道路交通法)で規定がないため、公道で使用することができない。

仮に、早い段階で制度を変えることはできた場合、社会実装する自動配送ロボットの技術は人の代わりになるほどのレベルまで達しているのだろうか。実用化するには、ロボットの信頼性や安全性など、高いレベルに達していなければならない。

楽天(三木谷浩史社長、東京都世田谷区)、西友(大久保恒夫社長、東京都北区)、および横須賀市が、同市内の「西友馬堀店」で取り扱う商品を自動配送ロボットで公道を走行して配達するサービスを、2021年3月23日から4月22日までの期間限定で実施。

ここで使われている自動配送ロボットの技術レベルについて、開発者であるパナソニック(津賀一宏社長、大阪府門真市)は「現時点では、遠隔監視、ならびに保安員がロボットに付き添って見守ることにより走行が認められている状況」だとしながらも、「小型低速ロボットの技術は現在、サービス実証が可能なレベルまで到達している」としている。

ロボットの近くを 保安要員が随行しながらではあるが、実際に、アプリからの注文を受け、店舗からロボットに商品を入れると、ロボットは自動で走行し、人や物を自動で回避しながら、注文した利用者の玄関前まで無事に荷物を運ぶことができた。

このほか、日本郵便(衣川和秀社長、東京都千代田区)では2020年9月に、ZMP(谷口恒社長、東京都文京区)が開発した配送ロボット「デリロ(TM)(DeliRo)」で、日本で初めてとなる物流分野での配送ロボットの公道走行実証実験を様々な場所で行っている。

自動配送ロボットの技術レベルについて、ZMPでは「法規制等を除いた場合、自動運転での配送は可能になっている。21年2月には食料品や日用品など異なる店舗の商品を同時に一般消費者へ配送することができる独自のデリバリーインフラの構築を目指し、ENEOS社と複数個所への配送検証も行っている」という。

また、「低速・小型の自動配送ロボットの公道使用が認められるようになれば、複数台のロボットを活用し、複数拠点のピックアップから複数拠点への配送を実現できるよう、配送管理のシステムも充実させていきたい」と考えている。

一方、自動配送ロボット以外では、ドローンの実用化も近づいている。令和2年度「秩父市山間地域におけるスマートモビリティによる生活交通・物流融合事業(内閣府地方創生推進交付金[society5.0 タイプ]採択事業)」における「秩父モデル」構築を推進している埼玉県秩父市、ゼンリン(髙山善司社長、福岡県北九州市)、楽天、アズコムデータセキュリティ(飯塚雅之社長、埼玉県秩父市)、早稲田大学(田中愛治総長、東京都新宿区)では2024年に、「MaaS」(貨客混載・EVカーシェアリング)「ドローン物流」「遠隔医療」などの先端技術を活用したサービスの社会実装を実現するとしている。

AIによる最適自動配車計画とトラックのリアルタイム運行管理、小型電動モビリティが自動追従機能で荷物を搬送することなど、山間部や過疎地の配送に取り組んでいるアズコムデータセキュリティの飯塚社長は「実用にはまだ、いろいろな規制緩和が必要で、墜落した時の補償などを含めてやらなければならないことがたくさんある」という。

ゼンリンのドローン推進課の深田雅之課長は「ドローンは技術的に100%完成しているといっても良い状況で、実際に長野県では運用が始まる」としながらも、「荷物の重さや距離、規制緩和などが進めば実用は近い」としている。

早稲田大学理工学術院の小野田弘士教授は「ドローンに関しては、技術的には実用できるレベルまで達しているが、マーケットが見えていないところがあって、ドローンの国内メーカーで量産できるところが無い状況で技術というよりシステム面で課題がある」という。

また「自動運転技術に関してもバリアフリーのロケーションだとか決められた場所を走るという部分は基本的にはできているが、事故が起きた時の責任などを整備しなければならない」とし、「1台のロボットを動かすのは難しくないが、複数台を走らせるのは難しい。だが、中国では100台を自動で動かしており、それを5人くらいで遠隔監視している。海外では技術が進んでいる」としている。