2024年問題が間近に迫るなか、慢性的なドライバー不足の物流業界では、その対策に苦慮している。なかでも引越業界では、運転だけでなくスキルが必要な積み下ろしなどの作業もあるため、待遇面でよほど魅力がなければ、ドライバーの確保は困難な状況のままである。このような課題や問題に、100社を超える事業者が一致団結して解決していく取り組みが始まった。

 

引越業界の人手不足を解消するためには、単純に賃金を高くすれば人が集まる可能性は大きくなる。だが、現状で人を集めるために必要な利益を確保できている事業者は多くないという。

その理由の一つとして、個人向けの引越一括見積もりサイトがあげられる。一括見積サイトは15年ほど前に、集客窓口が電話やチラシからインターネット市場へ変化していくなかで登場した。

 

経営者が集まって引越業界の様々な課題に取り組むために設立された日本最大級の引越ネットワーク「引越業界の未来をつくる会」(全国加盟会社数109社1月31日時点)。その会の運営事務局を担っているリベロ(東京都港区)の鹿島秀俊社長は、「一括見積もりサイトは必要だが、引越単価が適正価格でなければ、ドライバーを確保することができない」と話す。

「ユーザーが必要としている引越一括見積サイトが問題なのではなく、サイトが多すぎて集客するための広告費争いが引越事業者の負担になっていることが問題」としている。

「引越業界の未来をつくる会」に加盟している引越会社の多くが、一括見積サイトの必要性については認めているが、相見積もりの社数が多すぎることに不満を抱えている。

2024年問題を控えている状況で、十数社と相見積もりによる引越単価の叩き合いは引越会社を疲弊させてしまうため、ビジネスモデルとしては今後、継続できなくなる可能性が高い。

鹿島社長は「引越業界の中長期の未来に対して協力してくれる一括見積もりサイトと共同で、業界が良くなるオンライン集客を考えていきたい」とし、先ずは「相見積もりの社数を3社前後から始めて欲しいと交渉する」と話している。

業界のこのような動きに、ある大手引越一括見積もりサイトでは「業界の課題に対して、当社が協力できるところは真摯に受け止める」とし、「今の状態がいつまでも通用するとは思っていない」と回答。

「我々の事業も業界のサービスの構造を変えていきながら未来に発展できる状況を作っていけたらと思っており、そういうところを変えていかないとユーザーや、その先の皆さんも非常に不幸な状態は変わらない」。

オンライン集客によって価格競争の激化、売り上げの低下が進み、人件費を削減せざるを得ない企業が増加。これにより業界全体の離職率は高くなった。現状は業界全体が疲弊しつつあり、引越事業から撤退する会社も増え始めている。

 

このままでは、需要に対する十分なサービスを供給できなくなる恐れも出てくることから、これらの課題解決を進めて、引越業界を「働きたい」と言われる業界にすることが重要となる。そのためには、引越単価を適正価格にしてドライバーの給料を上げなければならない。