2024年問題の打開策の一つとして国をあげて取り組んでいる「中継輸送」。慢性的な人手不足やドライバーの高齢化など、業界が抱える課題の解決につながるのか――。

国交省では、「中継輸送」を「ドライバーの拘束時間短縮を目的として、1つの輸送行程を複数のドライバーで分担し、貨物を輸送する輸送形態」と定義している。

 

例えば、片道600kmの東京―大阪間を1台の車両とドライバーで往復する場合、1泊2日の車中泊や時間外労働を伴う運行となる。これを浜松や名古屋などの中継拠点を活用し、双方のドライバーを日帰り運行にするというものだ。

 

方法は主に、トレーラ・トラクター方式(ヘッド交換方式)、貨物積替え方式、ドライバー交替方式の3つ。ヘッド交換方式では、牽引免許を持つ運転者同士で行う必要があるが、貨物積替方式に比べて短時間の作業で済む利点がある。

 

同省では、道の駅やSAを利用した実証実験に取り組んでいる。令和3年11月には、札幌―枝幸町間の配送で、北海道名寄市の道の駅「なよろ」を中継地点に、ヘッド交換方式で実施。

 

従来の単独輸送では片道約300km、拘束時間は往復で約13.5時間だったが、札幌―なよろ間(同200km)は同8.5時間、枝幸町―なよろ間(同100km)は同7.5時間に削減できたという。

 

担当した運送事業者は、「働き方改革で中継輸送は必要不可欠。各地域にある道の駅を活用した輸送方法は、今後極めて重要になると思う」とコメント。ドライバーは、「一般車両と分離した動線や専用の駐車スペース、トレーラやヘッドの一時保管スペースがあると良い」と感想を寄せている。

 

同4年3月には、広島県廿日市市の山陽自動車道「宮島SA」を中継地点に、関西―九州間をドライバー交替方式で実施。単独輸送では15時間の運行だったが、九州―宮島SA間では7時間、関西―宮島SA間では9時間と日帰りが可能に。

 

ドライバーからは、「車中泊の負担が軽減された」と喜びの声が上がる一方、「中継地点付近に駐車施設やドッキング場を整備してほしい」「中継待ち合わせ時間のロス短縮が課題」との要望も出た。

ドライバー交替方式も中継輸送で有望視されているが、現役ドライバーは自身の担当車両に他のドライバーが乗ることをどう思うのか――。

トラックドライバー情報サイト「ブルル」が593人のドライバーを対象にアンケートを実施したところ、乗り回しを「全然平気」と答えたドライバーは12.5%、「嫌だが我慢できる」と答えた30.7%と合わせると、半数近いドライバーが「乗り回しは許容範囲」と考えていることがわかった。

 

自動車部品を運ぶドライバーは、「1台の車両を複数人で回すのが普通」と回答。あるドライバーは、「毎日、自分の私物を持って帰るのは面倒だが、『担当車両』という概念がなかった」と全く問題がない様子。

 

一方で、56.8%が「我慢できないので会社を変わる」と回答した。「絶対に嫌」「乗られる方も嫌だけど乗る方だって嫌」「トラックなら平気だが、トレーラは絶対に嫌」といった声が。

 

「我慢できない」理由は何なのか。いくつか傾向があり、1つ目は「回し乗りすると汚くなるし、雑に扱う人が多い」という意見。「人が乗る車をわざわざ綺麗にしたり、掃除しようとは思わない」「タバコを吸わないし芳香剤が嫌いだから乗り回しは嫌。 『全車禁煙・車中泊なし』なら・・・」「自分の布団やデスクを他人に使わせる人いる? 気持ち悪いし不潔」など、嫌悪感を示すドライバーが多くいた。

 

2つ目は、シート位置などの車両に関する問題。「シートやハンドルの位置を変えられると、自分の定位置にするのが面倒くさいし、クラッチのクセも人それぞれ違う」など。

 

3つ目は、荷物を運ぶ上での問題点だ。「混載の集配でステッカーやテープ、梱包用品のストックなどの資材が必要な場合、どこに何がどれだけあるとかが分からなくなるのでは」と危惧する声も。

 

また「荷物の積み付け方が分からぬまま引き継ぐのは不安。毎回同じ荷姿ではないはずだし、ドライバーそれぞれ自分に合った積み方がある」や「自分が最後まで責任を持って下ろしたい」など、荷物に責任を持つドライバーならではの意見も寄せられた。

 

実際に交替方式を導入済みの運送会社に勤めるドライバーは、「荷物事故が起きた時にモメまくる」と嘆いた。

 

「中継輸送を実現するためには国からの補助がほしい。スワップの箱などの導入を増やしたら割と専用車両でも問題ないのでは」という建設的な意見も寄せられ、ネット上では活発な議論が展開されていた。

 

ディ・クリエイト 上西社長「車両別動画マニュアル作成を」

交通事故防止コンサルを手掛けるディ・クリエイト(大阪府豊中市)の上西一美社長に、交替方式での注意点について聞いた。

「車両が変わると運転に影響があるのは事実ですので、運転マニュアルの整備は必須。弊社ではマニュアルの動画作成を行っていますが、今の時代であれば、車両別の操作マニュアルを動画で作成すればわかりやすいと思います」。

「車両が変わることがすべて危険だとは感じません。交通事故は慣れから来るものが多いので、慣れない車両に乗務することは、逆に緊張感を維持することにも繋がります。もちろん、新人運転者が乗り替えを頻繁に行うと事故リスクは上がりますので、これはベテランを前提とした話です」

「運行管理者さんは、出庫点呼でしっかりと車両の特性を伝えること、入庫点呼では車両の不具合をしっかり聞くこと、これらを絶対にやって頂き、運転者をサポートしてください」