「未経験からトラックドライバーに転職したいが、普通免許しか持っていない。大型免許を取ってから転職すべきか、それとも運送会社に採用されてからその会社の免許取得支援制度を使うべきか」。それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのかを取材した。

この質問を寄せた若者は20代前半で、所持しているのは現行の普通免許のみ。「運転が好きで自動車関係の職に就いたが、やはり自分で運転したい。長距離ドライバーになりたい」と話す。「まず中型免許や大型免許を取ってから転職活動すべきか、それとも普通免許のままでも良いものなのか…」と悩んでいるという。

この質問に対し、トラックドライバー情報サイト「ブルル」がSNS上で回答を呼びかけたところ、一時はトレンド入りするほど議論が紛糾。「先輩ドライバー」の意見は二分した。

自腹で取るべき

自身で免許を取得してからの転職を勧めるドライバーからは、「会社の支援で取得すると、金銭的には楽だけど辞めづらくなる」「タダより高いものはない。借金と同じ。免許取れたら即、大型でどこでも行けるわけはないし、免許取れるまで順調に仕事ができるのか」と、支援制度のデメリットを挙げる声が多く聞かれた。なかには、「その世界で働きたければ、必要な資格を持って門を叩くのが当たり前」と諭す意見も。

また、「人手不足の運送会社が多いので、仕事しながら免許を取得する暇がない。大型免許があったとしても、4トントラックに基礎が詰まっているので、4トンの練習を1年くらいはやったほうが良い」「小さめのトラックを経験してから会社の支援制度を使って大型を取得した人の方が離職率は低い。自分自身の適性を、経験をもって判断したほうが良い」と先輩ならではのアドバイスを送るドライバーも多く見られた。

支援は就職祝い

会社の支援制度の利用を勧めるドライバーからは、実体験も多く寄せられた。

「私はいまの会社で大型を取らせてもらったが、ずばり、それで良い。ドライバー不足なのだから、会社からの就職祝いみたいなもの。遠慮なくいただけばよろしい」「とりあえず、取得支援のある会社で横乗り研修しながら、仕事内容が自分に合っているか確認しつつ、大丈夫そうなら免許取得するのが無駄がない。人には得手不得手があるものだから。うちの会社も高卒が無免許で『運転手やりたい』と来て、研修しつつ免許を取って、いまでは第一線を張っているのでアリじゃないかな」。

また、運送会社の社長は、「普通免許で乗れる小型から始めて、準中型・中型・大型と会社の支援で上げていける会社もある。もし、自費で取るなら準中型までで十分。費用が一番軽く、応募できる求人が一気に増える。大きい免許ほど、仕事が合うと分かってからでも遅くない」とアドバイス。「支援制度を使うなら『何年、勤めたら返済不要か』『途中で辞めたらいくら返すか』だけは、入社前に必ず書面で確認を」と助言し、エールを送った。

ほかにも、「免許を取るまで勉強がてら配車補助をするという手もある。自分は大型を取るまでは4トンに乗っていたが、いまの若い子は軽四やワンボックスに乗っている。ずっと横乗りさせると辞めちゃう人も少なくない」「会社によっては、横乗りで先輩ドライバーから仕事を学びながら運送業の仕事に慣れさせて、半日仕事をさせつつ午後からは免許取得のために自動車学校に通わせるような会社もあるので、やっぱり会社選びが大切」「自費で取るなら教育訓練給付金の活用も検討を」といった声が寄せられた。

「辞めたら返済」は違法? 適法?

長瀬総合法律事務所(茨城県牛久市)の長瀬佑志弁護士は、「免許取得費用に返還の条件を付けること自体は、直ちに違法とはならない。適法かどうかは、辞めたら費用を払わせる『罰則型』か、会社が費用を貸し付け、一定期間勤務すれば返済を免除する『貸付型』か、という制度の組み立てで分かれる」と説明する。

「労働基準法16条(賠償予定の禁止)は、退職の自由を縛る足止め策を防ぐ趣旨で、退職などに備えて違約金や損害賠償額をあらかじめ定めることを禁じている」という。制度を設ける際は、「雇用契約書や誓約書に『○年以内に退職したら取得費用を支払う』と定めるだけでは、同条に抵触するおそれが高い。裁判例は、雇用契約と別の貸付契約があるか、取得が本人の希望によるか、業務との結び付きの強さ、免除期間と返還額の合理性を総合して判断している」と注意を促す。

期間の縛りは適法?

償却期間や返済期間の縛りを設けることは適法なのだろうか。「貸付型であれば、一定期間の勤務で返済を免除する定めは適法とされる余地がある。タクシー会社の二種免許の過去の事案では、『免許は本人に帰属し転職後も使えること』『返還額が20万円未満で免除までの期間が2年であったこと』から、同条違反ではないとされた(東京地判平成20年6月4日)」。

一方で、「免除までの期間が長い場合や、給与水準に比べて返還額が過大な場合は、足止め策と評価されやすくなる」とも。「会社が業務命令で取得させる場合も、本来、会社が負担すべき費用とみられやすくなる」と付け加える。

すぐに辞めたら?

では、返済途中で辞めた場合はどうすべきか。「免許取得後の退職であれば、契約に従い、残額の返済を求めることになる。最終の給与から一方的に差し引くことは賃金全額払いの原則(労働基準法24条)に反するため、分割返済の合意を書面で取り付けるのが現実的」と指摘。

「免許取得前の退職では、本人は免許という利益を得ていない。返済を求めるとしても、教習所の中途解約で戻る金額を差し引いた実費の範囲にとどめるのが相当」という。

運用のアドバイス

適法に運用するにはどうしたらいいか。同弁護士は、「別の裁判例では、求人広告で支度金の支給などをうたい、契約書に貸付金の内訳を記載せず、給与明細に手当として計上していた事案で、社内教習費と支度金は賃金に当たるとして返還請求が否定された(大阪高判平成22年4月22日)」例を挙げる。一方で、「同じ事案でも、教習所の授業料と交通費は貸付の対象とすることが認められている。制度が機能するかどうかは、書面と運用の一貫性で決まる」と説明する(図参照)。

また、「返還を求める仕組みに頼らず、一定期間、勤務した後の報奨金で定着を図る方法も、紛争予防の点では有効」とアドバイスしている。