茨城乳配が60周年 「継ぎたい」と思える会社へ、未来へバトンつなぐ
茨城乳配(吉川国之社長、茨城県水戸市)は今年8月に設立60周年を迎えた。吉川社長は、創業者である叔父、2代目の父からバトンを受け継ぎ、2018年に社長に就任。「企業の歴史としては、まだ道半ばかもしれないが、食品物流という社会インフラの一端を担う責任の重さを感じながら、1年1年、積み重ねて60年、ここまで来られた。自分だけの力ではできなかった。支えてくれた社員とその家族、そして取引先の皆様のおかげ」と感謝を口にする。

新たなチャレンジ 仲間いたからこそ
「社内だけでなく、ディーラー、ボディーメーカー、保険会社、銀行など、いろんな場所で、いろんな仲間がいたから、ここまで来られたし、新たな挑戦ができた」と同社長。「社員を守りたい、先代たちがつないでくれたバトンを未来につなぎたい、それが私の使命」と話す。
「これだけ環境の変化が目まぐるしく起こるなかで、自分の能力が追いつくかどうかせめぎ合いだった」と振り返る同社長。その使命を果たすため、経営大学院に入りMBAを取得した。
「会社としての特異性がない会社はどんどん淘汰されていくとの考えを持っているが、どうしたら残れる会社になるかと考えても、明確な答えは出なかった。多分こうなんじゃないかと思いながらアクションを続けてきた」という。
65歳で次代へ 引継ぎを計画
現在56歳の同社長だが、「65歳で引退というか、意思決定は次の代に引き継ぎたい」と考えている。理由は「65歳を超えると人間、頑固になる。先代もその頃に勇退しており、自分もそうしたいと自然に思うようになった」から。「我が子だけでなく、誰かに『継ぎたい』と思ってもらえるような魅力のある会社にしていきたい」と意気込む。

「これまで、家に帰って『2024年問題で残業代を減らさなければいけないのに、社員の給料も上げたい』といったジレンマをついこぼしてしまうこともあり、それを子どもたちに聞かれていた。だが、大変なことばかり聞かされていてはフェアではない。ネガティブなことを話してはいけないわけではないが、物流業の良いこと、うれしかったことも積極的に家で話すようになった」
「雷に打たれた」積極的に女性登用
従業員の福利厚生を拡充させている同社では、脳ドック検診や腰痛予防ベルトの貸し出しなど、さまざまな制度をラインアップ。「今後は、昨今多くなっていると聞く大腸がんを防ぐため、検査費用を負担する取り組みを検討している」という。
さらに、同社が推し進めているのが「女性登用」だ。きっかけは、経営者たちが集まるイベント「G1サミット」に同社長が出席した際に、参加者たちから「女性は意思決定に優れている」と聞いたことからだという。「全人口の半分は女性なのに、これまでは『できないことをどう補うか』という視点でしか見ておらず、プラス面は見えていなかった。雷に打たれたような衝撃だった」と明かす。
「振り返ってみると、確かに、やり遂げる力や教える能力など優秀な女性社員が多くいる」とし、「3年以内に女性リーダーを5人、任命するよう指示を出した」という。「いまの当社に女性リーダーという掛け算によって、新しい何かが生まれるかもしれない」と期待を寄せる。
「今年はグループ全体で、売り上げ49億円の着地になる見込み。来年こそは50億円を達成できるはず」と語る吉川社長。「いずれ、売り上げ100億円のロマンを目指したい。その先の150、200億円も」と、物流会社の未来を思い描いている。
地域貢献にも注力「必要とされる会社に」
地域貢献にも力を入れている同社。フードバンクが集めた食品を同社のドライバーがルート配送の途中で回収し、ボランティアをバックアップする取り組みや児童福祉施設でのクリスマスイベントなども行っている。

吉川社長は、「地域や世の中に受け入れられ、必要とされる会社でありたい」と目を細める。
◎関連リンク→ 茨城乳配株式会社
