2023年11月10日、首都圏にて、米流通大手の神明と木徳神糧による画期的な事業提携が発表された。両社は2024年4月1日に「日本精米センター株式会社」を立ち上げ、九州地方の精米施設を共同経営する。この新会社では、木徳神糧の鎌田社長が会長職に、神明の藤尾社長が社長職に就任予定だ。佐賀県鳥栖市の既存工場を活用し、出資比率は均等となる。

 

この協業は、福岡拠点の移転問題に端を発したものだが、実はより深い産業課題への対応策でもある。私たちの食卓を支える米産業は今、深刻な岐路に立っている。日本人の食習慣変化や人口減少で主食需要は縮小し、高齢化する生産者や気候変動による収穫不安定化が供給面を脅かしている。さらに、運送費や人件費の上昇が経営を圧迫し続けているのだ。

 

業界の構造も急速に変化している。農家グループによる法人化や直接販売ルートの拡大が進み、従来の卸売業の立ち位置が問われている。特に最近の米価格問題では、流通コストの高さが批判を浴びた。あなたが食べているお米の価格形成の仕組みが、今まさに変わろうとしているのだ。

 

両社は精米工場を単なる加工拠点ではなく、「地域農業の中核」「消費者価値創造の場」へと進化させる構想を描いている。多様化する私たちの食へのこだわりに応え、小分け生産や健康志向商品の開発、環境に配慮した運営など、新たな価値提供を目指している。この合弁事業は、米産業の未来と私たちの食文化を守るための、挑戦的な一歩と言えるだろう。

 

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