四方を海に抱かれた我が国では、食糧やエネルギー資源のほぼ全てが海を渡って届けられています。あなたの食卓に並ぶ食材や、家庭を温める電気の多くは、実は船の力なしには手に入らないのです。かつて世界を席巻した日本の船づくり技術は、今や中韓の巨大企業に押され、市場占有率はわずか8%まで縮小してしまいました。このままでは、かつての海運大国アメリカのように、造船技術の空洞化が進む恐れはないでしょうか？

 

最近、高市首相が「造船は国の経済と安全を守る要の産業」と言及し、与党内でも1兆円規模の支援基金創設の声が高まっています。しかし考えてみてください。公的資金の投入だけで、この苦境は本当に打破できるのでしょうか？答えはおそらく「否」でしょう。

 

企業自身による革新的取り組みこそが、復活の鍵を握っています。例えば、環境性能に優れた船舶設計力の弱さを克服するため、各メーカーが知恵を結集した共通設計プラットフォームの構築や、深刻な人手不足を解消するロボット技術の積極導入、さらには国際競争力を高めるための企業統合など、自助努力の余地は広がっています。

 

半導体分野での経験からも明らかなように、政府の支援だけでは産業復興は成し得ません。主役はあくまで民間企業です。官の適切なバックアップと民の自律的改革が調和してこそ、日本の造船業は再び世界の海で存在感を示せるでしょう。私たちが日常で何気なく享受している海の恩恵を守るため、バランスの取れた産業政策について、今一度考えてみる価値があるのではないでしょうか。

 

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