「トレーラの場所探しは深刻」 働き方改革に埋まる危うさ 高速道の駐停車違反

高速道路の本線に駐停車を禁ずる赤丸の道路標識は見当たらない。標識で指定する区域ではなく、法定の禁止エリアだからだ。危険防止の一時停止や故障などで、十分な幅がある路肩や路側帯にやむを得ず止めるような場合を除き、駐車も停車も許されない。
「トレーラの場所探しは深刻」と、中国道のSAで声を掛けたドライバー(佐賀ナンバー)。時短のために高速道路を通常の運行ルートにする運送会社も増えるなか、いわゆる430(ヨンサンマル)休憩やトイレの立ち寄り、仮眠場所を求める車両でSAは混雑するが、もともと駐車枠が限られるトレーラにはさらに厳しい現実がある。
●我慢も限界に
「ドライバーが可哀そうすぎる。満車で2つ(のSA・PAを)やり過ごし、3つ目のPA(京都府内)もダメで、本線合流部の手前の路肩に寄せて停車。我慢の限界だったらしい」と兵庫県南西部の70代のトラック経営者。近くをパトロールしていた警察車両がやってきた際、ドライバーは小用を足していた。
高速道路での駐停車違反(大型車)は2点で、1万5000円の反則金が科される。警察OBで、高速隊の経験もある岡山県の60代男性は「駐停車は基本的にダメだが、非常時というのであれば三角板などの表示義務がある。いずれの違反を取るかは(現場の判断によるので)わからない」と話す。ちなみに故障車両表示義務違反(同)は1点、反則金は7000円だ。
「高速バスの停留所にトレーラを止め、仮眠していて違反キップを切られたことがある」と、自らハンドルを握っていた当時の出来事を述懐するのは岡山県西部の運送経営者。現在も十数台のトレーラを保有しており、「ただでさえ駐車枠が限られているのに、そこにトラックや乗用車が止まっていればオシマイ。現場でのトラブルも聞くし、ドライバーは本当に苦労していると思う」と話す。
●警笛に逆ギレ
広島県の山陽道で数年前、信じられない“事件”が起きた。休憩を終えてトレーラ(福山ナンバー)がSAを出ようとしたところ、前方をふさぐ格好で乗用車が駐車。進路をあけてもらおうとクラクションを鳴らすと車は移動したが、トレーラの後方を追走。目的のインターを出たところで乗用車がトレーラの前に回って停車させ、複数人がバールのようなものでトレーラのフロントと助手席側のガラスを叩き割った――という災難だった。
カメラの角度を理解していたのか、ドライブレコーダーに犯人の姿は映っていなかった。そこまでのトラブルではなくても、大型用の駐車枠を占領する乗用車ともめそうになったという話は多い。高速バス停で捕まった前出の社長は「駐車マスの引き直しや時間帯で対象車を分ける動きも聞くが、違う区分に止めた場合は本線と同じような駐停車違反にすべきだ」と訴える。
宵積みが終われば出発…そんな個人のペースで運行できた時代は過ぎ、いまは目的地に到着する時間から逆算して出発するタイトなスケジュール。地方から東京や名古屋、大阪などの都市部に向かう営業車両が〝たまる〟ポイントもおのずと決まってくるが、そこに十分な駐停車場所が見つからなければ事態は深刻だ。
●拡張待てない
働き方改革という大義名分が、生身のドライバーがハンドルを握る現場とギャップを生んでいる。時短のために高速利用は有効で、確かにそこには駐車場とトイレがある…ものの、それが使えないのであれば高速道路に〝拘束〟されたようなもの。道路標識による指定がない、駐停車可能な場所を探せる一般道のほうがストレスフリーだ。
輸送効率を高めたい荷主のニーズと、時短による収入減で4㌧を大型に、大型からトレーラに乗り換えようとするドライバーの思いが車両の大型化を加速させる。大手製造の窓口となる元請け事業者のなかには「出入りするドライバー全員に携帯トイレを配り、使用済みは回収して再び新品を手渡す」(兵庫県のトレーラ事業者)という例も出てきた。
開始時期がずれ込んだが、そのうち高速道路の新しい深夜割引が始まる。国が考える“割引のための時間つぶし”が消え、SA・PAの混雑も改善されるのか。いまを生きるドライバーにとって、時間をかけたSA・PAの拡張工事など待てない――そんな現実があることも理解しつつ即効性のある施策も同時並行で必要だ。