奥洲物産運輸(菅井武英代表取締役、宮城県東松島市)は、トラックの屋根に設置可能な軽量薄膜ソーラーパネル「GasHeru(ガシェル)」を7月から本格的に販売。太陽光で電力を生成し、車両搭載のバッテリーに電力を供給する同製品は、発電した電力を直接バッテリーに供給することで、オルタネーターの負荷を軽減し、燃費とCO2排出量を改善。「いずれはすべてのトラックの屋根にソーラー電池が載る未来が来てほしい」と語る菅井代表に話を聞いた。

 

同社では昨年3月から試験的にソーラーパネルを自社車両3台に搭載。内訳は、増㌧車1台と大型トレーラ2台で、地場や長距離、日中走行メインか夜間走行メインかなど、運行方法が異なる3台で検証した。「燃費改善に関する教育は当社でも徹底しており、ソーラーパネルによる効果はあまり期待していなかったが、それでも最大12%改善した。長距離の夜間走行がメインの車両でも充分な効果を発揮したため、ガシェルを企画した」と振り返る。

 

「ガシェル」は、1枚250ワットのソーラーパネル2枚をトラック荷台の屋根に設置。燃費を可視化するIoT機器やケーブルなどを含め、総重量は14kg程度となる。「パネルの厚さも2mmほどで、重さも嵩も張らない」と指摘。「燃費向上のための製品・サービスは世の中に多数あるが、ドライバーの操作が増えるなど、負担になるものも少なくない。その点、ソーラーパネルは設置すればそのまま通常通り走行するだけ」と付け加える。

 

同製品は、昨年の検証を踏まえた同社の意見をもとに、Eキューブドゴールズ(濱﨑敏也CEO、東京都渋谷区)が企画・開発を、設計・監修は新明工業(近藤恭弘社長、愛知県豊田市)が手がけた。 同氏は、「運送会社が主体となって企画から開発に携わっているのは珍しいはず」とし、「運送会社によって荷台の形状が異なることも多いが、そういったことにもきめ細やかに対応できる」と胸を張る。

 

また、搭載するIoT機器によって、発電量や燃費、CO2排出量なども可視化でき、「数値で明確に示すことで、どのくらい効果があるかをわかりやすく表示する」としている。

 

施工については、「電装に詳しい方であれば2時間前後で付けられるシンプルさを目指した」という。「現在は、東京や名古屋、北海道など一部地域のみだが、本格販売をスタートさせる頃には、全国で取り付けをサポートする体制を整えたい」と準備を進めている。

 

同社が運送だけにとどまらない経営を目指したのは、「東日本大震災の後、苦渋の決断で従業員を解雇した苦い経験があったから」と振り返る菅井氏。「リスクマネジメントやCO2削減を『東北の人間として』考えてきた。トラックの屋根を活用できるガシェルを、『東北発のビジネス』として全国の皆さんとともに盛り上げていけたら」と語った。

 

◎関連リンク→ 奥洲物産運輸株式会社