60周年の啓和運輸 品質にこだわり「受けた仕事は自社で」

2024年、60周年を迎えた埼玉県入間市の啓和運輸。川島満社長は35年前、両親が創業した同社に入社。当時、トラックは51台、売り上げは6億円だった。入社後10年で社長に就任した際、「10年で売り上げを10倍にする計画を立てた」と振り返る。
4月には社員をねぎらう意味で大入り袋のボーナスを出し、5月にはテレビCMを放送した。「子どもや家族がテレビCMを見た時、『お父さんお母さんの会社はすごい』と思ってもらえるように」という思いを込めた。
「目標を立てることが好き」という同社長は、「自らもほかからも地域ナンバーワンといわれる実運送会社を目指していく」と話す。
同社は現在、社員数は約1600人まで増え、車両台数は1133台。今期は売り上げ220億円を見込んでいる。
今年はグローバル社員という位置付けで、5月から外国人ドライバーが運行を開始した。
同社では基本的に、トラックは1人1台制としており、交代での乗りまわしは行っていない。「トラックを使いまわすことでモチベーションが下がってしまうのでは」との危惧があるからだ。
グローバルな社員が増えていくなか、日本の道に不慣れでも運行できるルート便の仕事を作っていくことも考えているという。
多様な働き方を模索する一方、既存のドライバーへのサポートにも力を入れた。2024年問題が話題となった際、「働き方改革によって自分たちの給料が下がってしまうのでは」という不安にこたえるため、「ドライバーサミット」という場を社内に設けた。同社長自ら「ドライバーの給料が上がる政策」をドライバーに説明したという。
実際、運賃交渉と同様に仕事内容を精査した。その成果か、手積み・手下ろしが少なくなるなど、ベテランのドライバーに聞くと「昔に比べ仕事は楽になっている」と答えるという。
同社の協力会社比率は9%ほどで、自社比率が高い。受けた仕事は「啓和の仕事」として、自分たちで運ぶことで、品質にこだわっているという。
地場の輸送を得意とする同社だが、長距離輸送も構想を練る。関東・関西の地盤をしっかりと整備しながら、営業所を駅のように徐々に広げていく「地場の長距離」だ。手荷役や待機時間を減らしつつ、ほかの拠点にトラックをつなげていく。1人のドライバーが走る距離は短くても、長距離輸送ができる仕組みだ。
これまで毎期10~15%ほど売り上げは伸びており、積み重ねてきた結果から10年後のビジョンを見つめているという。これまでと同様に、会社拡大に伴う増員や、顧客単価を上げ、効率アップ、M&Aを組み合わせていく。今後の10年で売り上げは現在の倍の400億円を目指す。
会社として効率化のためDX化や外国人材の採用を進めるなか、川島社長自身60歳で区切りの今年、経営層の若返りを図り、さらなる飛躍を目指していく。
◎関連リンク→ 株式会社啓和運輸