軽貨物業界が適正化に向けて動き出している。軽貨物事業に対するルールが明確になりつつあるが、このままでは多くの事業者が対応できなくなる可能性がある。これは、現在の軽貨物業界にとって最も大きな課題といえる。

軽自動車による運送需要が拡大しているなか、2016年から2022年にかけて、保有台数1万台当たりの事業用軽自動車の死亡・重傷事故件数は約5割も増加した。そのため、国交省では2023年から、貨物軽自動車運送事業適正化協議会を立ち上げ、意見交換を開始した。

この検討会では、軽運送事業の事故防止に向けた安全対策徹底のための意見交換が行われ、荷主・物流事業者に対する監視体制やコンプライアンス強化に向けたルール作りが行われた。

今回の法改正では、軽貨物の安全対策として「貨物軽自動車安全管理者の選任と講習の受講」が義務付けられ、一定規模以上の荷主企業には、物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられた。

軽貨物事業者は、コンプライアンスを遵守して安全対策に取り組む、いわゆる「適正化している事業者」でなければ、荷主のサプライチェーンに入れなくなり、仕事がもらえなくなる。

だが、個人事業主が大半の軽貨物業界では、制度やルールの周知は簡単なことではなく、対応が遅れると仕事ができなくなる可能性もある。こうした状況を改善するため、業界の健全化に取り組んでいるのが、一般社団法人全国軽貨物協会(西田建太代表=写真、東京都港区、以下、全軽協)だ。

 

同協会は、7月1日付で一般社団法人全国軽貨物LINE協会(久保秀樹代表、大阪市)と合併。業界健全化のために奉仕する業界団体が必要だと考えていたという両代表。合併することで、全国の軽貨物事業者に向け、国が定めた制度やルールの周知やコンプライアンスを守るためのサポートを本格的に行うことができるようになるという。

 

全軽協では「あくまで社会と業界に奉仕する団体であって、一事業者や一会員に奉仕するための団体ではない」とし、「軽貨物パスポートという認定制度や運行管理支援センターなど、個社ではできない環境整備を行い、会員をはじめとする軽貨物事業者に貢献したい」としている。

 

同協会が行っているこうした取り組みには、人手も費用もかかるため、会費を集めて運営しているが、直接の見返りやメリットが無いと感じる事業者がいることも事実。こうした状況について西田代表は、「営利団体ではないので、どんどんサービスして会員を増やそうとは考えてはいない。会員への支援はもちろん行っていくが、会員に対して直接の見返りを出す団体ではない」「あくまで業界の健全な発展という目的に対して、個社では対応できないことを我々がやるという組織」「非営利団体といってもここで働くスタッフにも家族や生活があるので無償ではできない。協会運営は軽貨物事業に携わっていない人を集めて、中立の立場で業界の健全化の整備を行っている」「軽貨物業界を人が集まる魅力的な業界にするための環境整備が我々の目指すところ」と話している。

◎関連リンク→ 一般社団法人全国軽貨物協会