第203回:同一労働同一賃金最高裁判決にもとづく今後の対策とは
【質問】先日の同一労働同一賃金に関する最高裁判決を受けて、今後、運送会社に求められる対策を教えてください。
先日、同一労働同一賃金に関する重要な最高裁判決が連続して出されました。
地下鉄の売店や学校で勤務する非正規社員が、それぞれ退職金と賞与について、非正規社員に支給されないのは不合理として損害賠償を求めた裁判では、最高裁は退職金と賞与に関して、「不合理とまでは評価できない」とし、会社側の勝訴となりました。
一方、郵便事業会社に勤務する有期契約社員が扶養手当や年末年始勤務手当などについて、正社員のみに支給されていることを不合理として争った裁判では、最高裁は「不合理」と認め、会社側が敗訴しました。
今回の一連の判決と2018年の運送会社2社に対する最高裁判決とにより、同一労働同一賃金の考え方と会社の対策がより鮮明になってきました。
今回の最高裁判決を受けて、早急に社内制度を見直す必要があります。見直しの観点を次に列挙します。
①正社員と非正規社員(嘱託、パートなど)の定義づけを就業規則に明記する︱例:「正社員は長期雇用を前提とし、職務内容及び勤務地を限定せず、会社の命により異動することがある。中核社員として担当業務の完全遂行のみならず、社内全般業務に関心を持ち、意見具申、社員教育指導を遂行する責任を持つ」「嘱託社員は定年後に一年契約で再雇用された社員であり、職務内容、勤務地の変更は行わない。やむを得ず変更する場合は、本人の同意を得るものとする。担当業務を完全に遂行する役割を持つ」などと記載する。
②人事考課表を社員ごとに作成する︱正社員用と嘱託・バート用の人事考課表を区分し、正社員用の評価表は、例えば「後輩社員などに対する教育指導」「生産性向上に関する取り組み」など正社員の役割と責任を評価する項目を追加し、非正規社員用には日常の担当業務を完全にこなすことのみを求める項目にする。
③賃金体系をゼロから見直す︱最高裁判決により、諸手当の格差は、ほぼ全面的に不合理と認定されることが鮮明になった。本来、賃金は職務内容や業務の遂行度、貢献度などによって公正に支給されるべきものであり、家族手当や皆勤手当などの手当を連ねる賃金制度が本当に合理的な体系なのかを再検討し、ゼロベースで見直す必要があります。以上の対策は新法が中小企業に適用される来年4月までに行う必要があります。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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