「ブームを取り付けた状態で総重量は40トンを切る。4軸車なので軸重は10トン未満となり、通行許可が取りやすくなる」と、このほど導入したドイツ・リープヘル社製の100トン吊りオルタークレーンのメリットを話す井上茂氏(井上運輸機工社長、岡山市南区)。クレーン建設や運輸、工事など幅広い事業を手掛ける同社は現在、コンプライアンスの徹底を意識した事業拡大を進めている。

車限令で、高速道路や重さ指定道路で車両総重量が25トンに緩和されるトラックとは異なり、クレーンの場合は同20トンを超えれば特車の通行許可が欠かせなくなる。「大型トラックと同じ扱いにしてもらいたいというのは我々の要望の一つ」と話す。

220トン吊り1台と100トン吊り3台のオルタークレーンとラフタークレーン23台、クローラークレーン3台を保有する。「うちには今回導入したものとは別に100トン吊りが2台あるが、いずれも車両総重量は42~43トン。通行許可を取得するうえで40トンを切る意味は大きい」と説明。オルタークレーンは一般的に走行用と操作用で2つのエンジンを搭載するが、新しく導入したリープヘル社製は1つなのに加え、全体の軽量化も図られているという。

同社は昨春、伸縮させることで9mの荷台(中落ち部分)を確保できる低床のトレーラシャシーを導入した。3軸のうち後ろ側の2軸が切れるため、一般的に14.3mとなる最小回転半径が12.9mと短く、狭い場所に入ることも可能になるほか、クローラークレーンなど同社が得意とする特殊輸送を強化。その後も同じく伸び縮みする高床シャシーを投入してきたが、さらに同車1台を8月に追加する。

コロナ対策で5月の連休明けから「会社の休憩室が密にならないように、仕事のない社員らは自宅で待機するように徹底しており、それ以外の者にも業務が終わればすぐに帰るように指示している」という。ポストコロナの経済復興に備え、法令順守の徹底を念頭に置いた企業活動を進める同社にとって、今回の100トン吊りクレーンは「通行時間帯に縛られないことで社員の労働時間対策にもつながる」と見ている。

 

◎関連リンク→ 井上運輸機工株式会社