「この車はどんな方が購入されますか？」そんな素朴な疑問に米国販売員が眉をひそめる光景を目にしたことはないだろうか。日本では当たり前の質問が、なぜ向こうでは受け入れられないのか。その背景には文化の違いが横たわっている。

 

私は30年以上前から定期的に南カリフォルニアを訪問している。近年は観光地よりも「オートモール」と呼ばれる新車ディーラーが集中するエリアを巡ることが習慣となった。最初の訪米体験は1989年、大学3年生の春休みだった。当時は日本のカタログと交換してもらい、ディーラーのスタッフに大歓迎された思い出がある。

 

米国では車の購入層について尋ねると「欲しい人が買うだけ」という反応が返ってくる。これは個人の自由を重視する国民性の表れだろう。スーツ姿でピックアップトラックを運転する姿も珍しくない。車種と職業や属性を結びつける固定観念は、米国では通用しないのだ。

 

日米の自動車文化の違いはここにある。「誰が乗るべき車」という概念より、「自分が何を求めるか」が優先される社会。紙のカタログが減少傾向にあることは寂しいが、米国流の多様性を尊重する姿勢には学ぶべき点がある。あなたは車選びで他人の目を気にしすぎていないだろうか。車と人の関係を見つめ直すきっかけになれば幸いだ。

 

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