「予想を大きく上回る結果でした」。第一生命ホールディングスの人事トップ、沼田氏はこう語ります。同社が設定した1000名の早期退職枠に対し、1830名もの社員が手を挙げたのです。対象となる50歳以上の長期勤続者約4000名のうち、実に半数近くが会社を去る道を選びました。

 

なぜこれほど多くの社員が退職を決意したのでしょうか？その背景には「最大48カ月分」という破格の退職金上乗せ条件があります。しかし、単純な人員削減策ではありません。業績は前期比34％増と好調で、むしろ企業の急速な変革と社員のキャリア観の変化が鍵を握っています。

 

同社は従来の国内生命保険ビジネスから脱却し、グローバル展開や非保険事業への拡大を加速させています。今年5月にはベネフィット・ワンの買収を実施し、海外では9カ国に事業を展開。さらにジョブ型人事制度の導入や中途採用の増加など、組織改革も進行中です。来年4月には「第一ライフグループ」への社名変更も控えています。

 

こうした急激な環境変化に戸惑いを感じる長年の社員も少なくありません。一方で、65歳定年制の導入により、セカンドキャリアをより早く準備したいという声や、介護・健康問題で仕事継続に悩む社員も増えていました。菊田社長は昨年11月14日、「人生100年時代において、社員に新たな選択肢を提供することが双方にとって有意義」とのメッセージを社内に発信。会社の変革と個人のライフプラン見直しが重なり、予想を超える応募者数につながったのです。

 

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