交通インフラの革新を目指すベンチャー企業が福島で新たな一歩を踏み出しました。電気駆動式の空中移動システム「ジッパー」の実証基盤が、福島県南相馬市に姿を現したのです。慶応大学から誕生したスタートアップ「ジップ・インフラストラクチャー」は、この革新的な交通機関の社会実装に向けて大きく前進しています。

 

あなたはこんな経験はありませんか？渋滞に巻き込まれて予定が狂ってしまったり、バスの本数減少で不便を感じたり。こうした地域交通の悩みに対する答えとなる可能性を秘めているのが、このジッパーなのです。

 

このシステムの魅力は何と言ってもコスト効率の良さにあります。建設費用は従来の路面電車の約3分の1、モノレールと比べると5分の1程度で済むとされています。1kmあたり10〜20億円の投資で、高架を走る未来の交通網を構築できるのです。12人乗りの車両が電池の力で自走する仕組みは、従来のロープウェーの概念を覆します。直線だけでなくカーブや分岐も可能で、無人運転にも対応します。

 

南相馬市内に完成した約40メートルの試験路線では、体験者から「振動がほとんどなく」「静かで快適」という声が上がっています。将来的には全長120メートルまで延伸される予定で、2028年には私有地での運用、2033年には公共交通機関としての本格導入を目指しています。

 

運転手不足や人口減少に悩む地方自治体から、都市部の渋滞や環境問題に直面する海外まで、このシステムへの期待は広がっています。北海道石狩市をはじめとする複数の自治体が既に関心を示し、空港や工場内の移動手段としての問い合わせも寄せられているようです。私たちの暮らしの中で、頭上を静かに走る新たな交通手段が実現する日も、遠くないかもしれません。

 

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