労働安全衛生規則の一部改正の話

今日のお題はこれじゃよ。運送企業さん向けのお話じゃけど、トラックを運転するドライバーさんにも関わる話じゃ。
ドラ博士
あー、厚生労働省が発表したヤツですね。
ドライバーさん
ンム。厚生労働省から、労働安全衛生規則の一部を改正する省令と、安全衛生特別教育規程の一部改正が、今年(2023年)の3月28日に公布されたんじゃよ。
ドラ博士
主な改正内容は①昇降設備の設置及び保護帽の着用が必要な貨物自動車の範囲の拡大、②テールゲートリフターを使用して荷を積み卸す作業への特別教育の義務化、③運転位置から離れる場合の措置の一部改正の3つじゃよ。
昇降設備は今は最大積載量5トン以上の車両に義務付けられていますよね?
ドライバーさん
ンム。①の昇降設備の設置および保護帽の着用じゃけど、これは令和5年(2023年)10月1日より施行されるぞい。
適用されるのは昇降設備に関する第151条67と、保護帽の着用に関する第151条74じゃ。これが現在の規則じゃね。
ドラ博士

昇降設備

第151条の67 事業者は、最大積載量が五トン以上の貨物自動車に荷を積む作業(ロープ掛けの作業及びシート掛けの作業を含む。)又は最大積載量が五トン以上の貨物自動車から荷を卸す作業(ロープ解きの作業及びシート外しの作業を含む。)を行うときは、墜落による労働者の危険を防止するため、当該作業に従事する労働者が床面と荷台上の荷の上面との間を安全に昇降するための設備を設けなければならない。

   前項の作業に従事する労働者は、床面と荷台上の荷の上面との間を昇降するときは、同項の昇降するための設備を使用しなければならない。

保護帽の着用

第151条の74 事業者は、最大積載量が五トン以上の貨物自動車に荷を積む作業(ロープ掛けの作業及びシート掛けの作業を含む。)又は最大積載量が五トン以上の貨物自動車から荷を卸す作業(ロープ解きの作業及びシート外しの作業を含む。)を行うときは、墜落による労働者の危険を防止するため、当該作業に従事する労働者に保護帽を着用させなければならない。

   前項の作業に従事する労働者は、同項の保護帽を着用しなければならない。


安全衛生情報センター
労働安全衛生規則 第二編 第一章の二 荷役運搬機械等
より引用

んで、これが法改正で、2トン以上の貨物自動車に適用されるんじゃよ。
まず、第151条の67の昇降設備についてじゃけど、
荷物の積み卸しを行う時は昇降設備を設置しなくてはならんぞ、と。
んで、この昇降設備はトラックに昇降用のステップが設置されていればそれでもOKじゃ。
テールゲートリフターを昇降設備として使うこともOKじゃよ。
ただし、テールゲートリフターを使う場合は中間くらいで止めて無理なく上り下りできる高さで踏み台に使うならOKじゃけど、エレベーターみたいにテールゲートリフターに乗って昇降させるのはNGじゃ。
ドラ博士
具体的に昇降設備ってどんなものならOKなんでしょう?
ドライバーさん
陸上貨物運送事業労働災害防止協会が詳しく説明してくれとるよ。こんな感じじゃね。
ドラ博士

保護帽の着用

  • 地面から踏面(2段以上の場合は段差ごと)の段差が 50cm以内であること
  • 両足を置くことができる踏面幅であること
  • 踏面表面上に滑り止め加工がされていること
  • 踏面は板状またはスリット状であること(角柱状や棒状 の場合は、三点支持による昇降ができる昇降グリップ が必要)
  • 車両取付型の場合は、リア、サイド、あおりなど車体側 面から突出して1か所以上設置されていること
  • 地面から荷台までの間に、荷台から見て足裏の半分 以上の長さが視認できる踏面が1段以上設置されていること

陸上貨物運送事業労働災害防止協会 労働安全衛生規則等一部改正のQ&Aより引用

これ、企業側の準備が必要ですね。
トラックに昇降設備があるものにしたり、手すりのある昇降設備を用意したり。
ドライバーさん
ンム! 運送企業さんは条件を満たす車両や昇降設備が必要じゃ! トラックの見直しや昇降設備が不足しとらんか確認せにゃならんぞい。
ドラ博士
んで、第151条の74の保護帽じゃけど、これはヘルメットじゃね。
帽子やタオルじゃ駄目じゃよ!
きちんと「保護帽の規格」に合格したヘルメットの着用が義務づけられるからの!
更に荷役作業をする際はヘルメットの検定合格標章をチェックじゃ。
「墜落時保護用」の記載があるヘルメットを使うんじゃよ。
ここが「飛来落下物用」だけのヤツはNGじゃ!
ドラ博士
これも企業側のチェックが必要ですね。
ドライバーさん
ンム。んで、保護帽の着用の改正後は
  • 最大積載量が5トン以上
  • 最大積載量2トン以上5トン未満で、かつ、 あおりのない荷台を有する貨物自動車、 平ボディ車やウイング車などの荷台の側面が開放できる貨物自動車、 テールゲートリフターが設置されている貨物自動車でテールゲートリフターを使用する場合
当てはまる場合は、保護帽の着用が義務付けられるんじゃ。
ドラ博士
なるほど。あおりからの転落事故とか、テールゲートリフターを使った際に荷物が倒れる事故の話はよく耳にしますもんね。
ドライバーさん
ンム。テールゲートリフターを使用して荷を積み卸す作業への特別教育の義務化、これは 労働安全衛生法第59条第3項にこういう記載があるんじゃよ。
ドラ博士

安全衛生教育

第59条 3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。


安全衛生情報センター
労働安全衛生法 第六章 労働者の就業に当たっての措置
より引用

荷役作業の際にテールゲートリフターの操作中の事故も多いんじゃよ……。
怖いのはスーパーなんかで見かけるカゴ台車(ロールパレット)とか、プロパンガスなんかを下ろしてる際に一緒にリフターに乗ってて転落して、荷物の下敷きになって亡くなった、なんて事故も実際に起こっておるんじゃ……。
ドラ博士
痛ましい事故ですよね……。危険性なんかを理解していないと、ちょっとくらい不安定でもいけるいけるって思っちゃうんでしょうね。
慣れてるから大丈夫、みたいな。
ドライバーさん
だからこそ、教育の必要性が問われたんじゃね。
特別教育の受講者、科目等の記録を作成し、3年間保存する必要があるんじゃよ。
内容はこんな感じじゃ。
ドラ博士

テールゲートリフター(TGL)特別教育のカリキュラム

TGLに関する知識 TGLの種類、構造及び取扱方法
TGLの点検及び整備方法
1.5時間以上
TGLによる作業に関する知識 荷の種類及び取扱方法
台車の種類、構造及び取扱方法
保護具の着用 災害防止
2時間以上
関係法令 法、令及び安衛則中の関係条項 0.5時間以上
実技 TGLの操作方法 2時間以上
やっぱり受けないと罰則があったりするんですよね?
ドライバーさん
受けないというか受けてないのに作業させたら罰せられるのは事業者じゃからね?
6ヶ月以下の懲役または50万以下の罰金、更に記録を保存しとかなんだら50万以下の罰金じゃ。
つか社員の安全に配慮するのは事業者の務めじゃからね?
忙しくてもやらんといかんぞい。
ドラ博士
その辺ちょろまかされるとブラックな予感しかないですもんね……。
ドライバーさん
真面な会社はちょろまかさんから大丈夫じゃよ。
んで、最後の運転者が運転位置から離れるときの措置の適用除外、じゃけど、現在の労働安全衛生規則、略して安衛則にはこう記載されとるんじゃよ。
ドラ博士

運転位置から離れる場合の措置

第151条の11    原動機を止め、かつ、停止の状態を保持するためのブレーキを確実にかける等の車両系荷役運搬機械等の逸走を防止する措置を講ずること。


安全衛生情報センター
労働安全衛生規則 第二編 第一章の二 荷役運搬機械等
より引用

けど、作業するのがドライバーさんだけだった場合、外にスイッチとかがあると作業できなくなっちゃうんじゃよね。
ドラ博士
あー・・・。確かに。
ドライバーさん
てなわけで、運転席とTGLの操作位置が異なる場合は、原動機を止める、とかは除外になるんじゃよ。
ドラ博士
なるほど。
ドライバーさん
自分は大丈夫とか慣れとるからとか、そういう考えが事故のもとになるんじゃ。
ぶっちゃけ事故を起こそうと思って事故を起こす人はおらんのじゃよ!
会社の為、従業員の為、家族の為、自分の為!
うるせーと思わずに、法は守らねばならんぞい!
ドラ博士

先週は更新出来ませんでした;ごめんなさい。
教えてドラ博士は、作者の都合で隔週木曜日に変更になります。次回は7月20日更新予定です! お楽しみに!