軽貨物自動車運送事業法の改正で何が変わる?企業が対応すべきポイント

オンラインショッピングの拡大に伴い、個人向けの宅配荷物が急拡大し、軽貨物自動車による配送が増加し、新規参入が増大しています。
個人事業主が大手運送会社の下請けとして、業務を担うケースも増えました。
一方、軽貨物自動車の増加に伴い、死傷事故も増えています。
そこで、軽貨物自動車運送事業法が改正され、事故防止や安全対策が厳しくなることになりました。
この記事では、軽貨物自動車運送事業法の改正で何が変わるのか、企業が対応すべきポイントについて解説していきます。
目次
貨物軽自動車安全管理者の選任と講習受講の義務
軽貨物自動車運送事業法の改正に伴い、貨物軽自動車運送事業者は、営業所ごとに貨物軽自動車安全管理者を選任し、国土交通大臣への届出をしなくてはなりません。
事業所が1つなら1人でも良いですが、営業所が複数ある場合は、営業所ごとに専任しなくてはならないので注意が必要です。
専任にあたっては、あらかじめ所定の教育機関を通じて、貨物軽自動車安全管理者講習を受講させなくてはなりません。
選任後も2年ごとに講習の受講が義務付けられ、安全管理者の更新が求められます。
軽貨物事業を行う企業としては、安全管理者を適切に選任して維持することが求められるだけでなく、講習を受講させる費用や時間なども確保する必要があります。
安全管理者として適切な人材の専任や確保も求められることになるでしょう。
新設される貨物軽自動車安全管理者制度のポイント
営業所ごとに安全管理者の専任が必要となりますが、一人ドライバーの個人事業主の場合は、基本的に本人が担います。
安全管理者の選任時に加えて、2年に一度安全面に関する知識を学ぶ講習を受講しなくてはなりません。
改正法が施行される2025年4月以降に新規で開業する場合には、開業時の必須要件となりますが、既存業者については2年間の猶予期間が設けられます。
もっとも、事故予防をはじめ、取引先からの信頼を確保するためにも早めに対応するのがおすすめです。
特定のドライバーへの指導・監督と適性診断の義務
軽貨物自動車運送事業法の改正に伴い、事故を予防し、安全な業務を遂行させるために特定のドライバーへの指導・監督と適性診断も義務付けられました。
初任のドライバーをはじめ、高齢ドライバーおよび過去に死亡事故を起こした場合や重傷者を発生させた交通事故を起こした経歴のあるドライバーに特別な指導と監督を行うとともに、適性診断を受診させることが求められます。
特定のドライバーについて氏名と指導内容、適性診断の受診状況などを記録した貨物軽自動車運転者等台帳を作成したうえで、営業所に備え置くことも義務化されます。
適性診断や指導監督のポイント
適性診断を受けさせる義務があるのは、個人事業主として軽貨物ドライバーを始める時や貨物軽自動車運送事業者が新たにドライバーを採用した時です。
また、65歳以上のドライバーについては、3年に1回のペースで適性診断を受けさせることが必要です。
さらに、一定規模の事故を起こしたドライバーについても、適性診断を受診させるとともに、診断結果によってはドライバー以外の職務への配置転換を行うことや事故を起こさないよう徹底した指導や監督をしなくてはなりません。
記録の作成や保存と報告義務
軽貨物自動車運送事業法の改正に伴い、業務記録や事故記録の作成や保存、一定の事故を起こした場合の国土交通大臣への報告なども義務付けられます。
業務記録の作成と保存義務
貨物軽自動車運送事業者は、ドライバーの氏名と車輛番号ごとに業務の開始、終了、休憩の日時と地点を記録するほか、業務に従事した距離や主な経過地点などきめ細やかに記録したうえで、書類を1年間保存しなくてはなりません。
必要事項を記録できるフォーマットの作成や保管管理できる体制を整えましょう。
事故記録の作成と保存義務
万が一事故が起こった場合には、ドライバーの氏名と事故の発生日時と発生場所、事故の概要と原因、再発防止対策などを記載した事故記録の作成が求められます。
事故記録は発生から3年間保存しなくてはなりません。
国土交通大臣への事故報告
死傷者が発生するような重大な事故が発生した場合には、ドライバーの氏名や事故の発生日時と発生場所、事故の原因、事故当時の状況と処置、再発防止対策について、国土交通省が求める所定の様式で記録したうえで、事故発生時から30日以内に国土交通大臣に報告しなくてはなりません。
また、2人以上の死者が発生するような特に重大な事故を引き起こした場合には、事故から24時間以内を基準に、速やかに運輸支局などに報告することが求められます。
ネガティブ情報の公表制度
事故速報が必要となる大きな事故が発生した場合をはじめ、安全管理者の設置や更新を怠るなど、法令違反により行政処分を受けた場合には、ネガティブ情報として国土交通省のホームページ上に公表されるので、適切な運用と事故防止を図っていきましょう。
まとめ
軽貨物自動車運送事業法の法改正に伴い、安全管理者の設置や講習の受講義務、特定ドライバーの適性診断の実施と指導、監督をはじめ、日々の業務記録や事故記録の作成と保存義務、事故報告など義務付けられます。
運送事業者の方はしっかりと確認をしておきましょう。