運送会社における「同一労働同一賃金」の実態はどうなのか?
- この記事の要約
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運送会社における「同一労働同一賃金」の実態はどうなのか?
「同一労働同一賃金」とは、正社員とパートや契約社員が同じ仕事をするなら、同じ待遇を受けるべきだという考え方です。これにより、どの雇用形態でも納得できる待遇が受けられることを目指しています。
パートタイム・有期雇用労働法は、2020年から大企業に、2021年から中小企業にも適用されています。法律では、正社員とパート・契約社員の仕事が同じなら、同じ賃金や待遇にする必要があり、違いがある場合はその違いに応じた待遇差にしなければなりません。
運送会社では、ドライバーの仕事に関して裁判が起こり、正社員と契約社員、再雇用された社員との賃金差が問題になりました。裁判の結果、一部の手当の格差が違法とされましたが、定年後に再雇用された社員の場合は、格差が許容される場合もありました。
一部の運送会社では、まだ賃金や待遇に違法な格差が残っている可能性がありますが、最近では人材不足の影響で非正規社員の処遇を改善する動きが進んでいます。賃金は同じでも、賞与や退職金にはまだ差が残る会社もあります。 今後は、全ての待遇において、正社員とパートや契約社員の間の格差がなくなることが期待されています。
「同一労働同一賃金」とは、同一企業内における通常の労働者(正社員)と短時間・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、自由に働き方を選択できることを目指すものです。
2018年に改正された「パートタイム・有期雇用労働法」により定められ、大企業には2020年4月から、中小企業には2021年4月から適用されています。
法律の趣旨を簡単に要約すると、正社員と短時間・有期雇用労働者の間で仕事の内容や異動・転勤等の有無やその範囲が全く同じ場合は待遇を同じにする必要があり、違いがある場合はその違いに見合った範囲での待遇差に留めることが必要という内容です。
また、待遇差を設ける場合は短時間・有期雇用労働者の求めに応じて、その待遇差の内容や理由等を説明する義務が会社側に課せられています。
「同一労働同一賃金」というと、賃金だけの問題のように聞こえますが、実は賃金だけでなく、賞与や退職金・福利厚生・教育訓練・休日・休暇など全ての待遇が対象になっています。
そこで運送会社の実態はどうなのかが問題になりますが、実は法改正の前に最高裁まで争われた運送会社の裁判事例が2社有り、同一労働同一賃金に関する代表的な判例になっています。
一つは正社員ドライバーと定年前の有期雇用ドライバーとの間の賃金等の待遇差が不当と訴えた裁判であり、結果は無事故手当や作業手当、皆勤手当など諸手当の格差の大半が違法と判断されました。
それに対し、別の運送会社において定年後再雇用ドライバーが正社員との格差を違法として訴えた裁判では、最高裁は
- 1.定年後再雇用社員は長期間の雇用が想定されていない
- 2.老齢厚生年金の受給が見込まれる 等の理由で格差が違法とまでは言えないと判断しました。
同一労働同一賃金に関する最初の最高裁判決が運送会社2社の裁判でしたので、運送会社の実態が大きくクローズアップされました。
そもそも一般的な運送会社において、ドライバーの仕事は正社員も契約社員も定年後再雇用社員もほとんど変わらない仕事をしており、賃金等の待遇に格差を設けることに対して合理的な説明を行うことが困難なケースが多く見られます。
特に旧来の賃金制度を変えずにそのまま継続している会社の中には、定年を過ぎた段階で当たり前のように賃金を引き下げている会社が時々見られます。
トラック協会等の業界団体は法改正後、同一労働同一賃金に関するセミナーや研修会等を全国各地で繰り返し開催して事業者に周知する活動を行っていますが、研修会等に参加しない中小零細企業も多く、未だに違法な格差が残っている可能性があります。
今後さらに周知と指導を進めていく必要があるでしょう。
ただし、最近は主に人材不足の影響から、非正規社員の処遇を改善する動きが活発になっており、ドライバー確保に熱心に取り組む運送会社においては、正社員以外の非正規社員の処遇を正社員と同一にする動きが出ています。 近年、賃金水準や賃金の計算方法を雇用形態に関わらず同一に変更した会社が増えていますが、賞与や退職金制度等には未だに格差が残る会社も散見されます。
これから全ての待遇において、正社員と短時間・有期雇用労働者の間の格差が早期に解消されていくことが望まれます。
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