震災で崩壊した東京の復興を支えたのは、意外にも多摩川から採取された小さな石だったことをご存知ですか？江戸期から道や庭に使われてきた多摩川の砂利は、明治以降、鉄道敷設の基礎材料として注目されるようになりました。

 

この砕石は単なる石ころではなく、線路を安定させる要となるもの。雨水を逃がし、列車の重みを地面全体に分散させる役割を担っていたのです。都市の発展と建設ラッシュは、こうした素材の需要を爆発的に増加させました。

 

河原での砂利集めは、周辺農家にとって稼ぎ時でした。重労働ながらも高収入が得られ、当時としては贅沢な白米の昼食を食べられるほど。特殊な道具を使って砂利をすくい、ふるいにかけて大きさを揃える—この地道な作業が都市と地方をつなぐ経済の循環を生み出していたのです。

 

1923年の関東大震災後、砂利需要は飛躍的に拡大しました。倒壊した街を再建するため、最新技術だった鉄筋コンクリート建築が広く採用されたからです。もともと植木鉢の補強として発明されたこの技術は、コンクリートの弱点を克服し、都市の近代化を加速させました。

 

あなたが今日見る東京の基礎には、多摩川の石と地域の人々の汗が埋め込まれています。単なる建設資材の供給以上に、都市と地方の新たな関係性を構築した「砂利の物語」は、災害からの復興と地域経済の発展が密接に関わっていたことを教えてくれるのではないでしょうか。

 

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