昭和60年1月に現役から退いた時、スポーツ選手としての章を閉じ、家族経営の物流会社で新しい一歩を踏み出そうとしていました。しかし、予想外の展開が待ち受けていたのです。会社の電話は鳴りやまず、講演依頼やイベント出演の誘いが絶え間なく舞い込んできたのです。

 

親はこの状況を見て「しばらく自分の道を探してみたら？」と提案し、企画開発部門という特別な場所を用意してくれました。私専用のマネジメント担当者まで付けてくれたのです。時間が解決してくれるだろうという親の期待がそこにありました。

 

「まだ力を残したまま引退した」と世間では評されましたが、実際は違います。身体は限界を迎えていたのです。足腰の故障を抱えながらも、弱音を吐かなかったことが、そのような誤解を招いたのでしょう。あなたも何かを諦める時、外見と内実の差に苦しんだことはありませんか？

 

その後、巨人軍の名誉監督からのアドバイスもあり、ラグビー界から初めてスポーツキャスターへ転身。「独占！スポーツ情報」という番組で平成元年4月から2年間司会を務めました。しかし、テレビ業界は未知の世界でした。

 

放送の仕組みやスポンサーとの関係性も理解せず、「CMが流れたらチャンネルを変える」などと無邪気に発言していました。生放送では準備していても思わぬ言葉が飛び出す。視聴者として見ていた世界と、作り手として立つ世界のギャップに戸惑う日々でした。テレビの舞台裏を知るほどに、自分の無知を痛感する経験は、新たな分野に挑戦する誰もが通る道なのかもしれません。

 

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