次世代モビリティの黎明期 – 2011年のショーに見た電動商用車の先駆け

「ジャパンモビリティショー2025」開催まであとわずか。振り返れば、約14年前の2011年に開かれた東京モーターショーでは、現代の電動化技術の萌芽とも言える革新的な商用車が多数登場していました。あの時見た未来の形が、今どのように結実しているか考えてみませんか？

東日本大震災という国難の中でも、日本の技術力と回復力を示すかのように開催された第42回ショーは、東京ビッグサイトを舞台に174社が参加。402台の車両が展示され、84万人超の来場者で賑わいました。特に注目すべきは、4年ぶりとなった商用車部門の出展内容です。

いすゞの「T-NEXT」は、空気抵抗を抑えた流線型ボディと電子サイドミラーを備えた大型トラクターの試作車。この時のデザイン哲学は後の新型ギガに引き継がれることになります。日野自動車が提案した「eZ-CARGO」は、前輪駆動方式によって荷室の床面を極限まで低くした都市向け配送用の電気トラック。この発想は現在の電動配送車両開発の礎となりました。

驚くべきは三菱ふそうの「キャンターE-CELL」でしょう。この小型電動トラックは単なる展示モデルではなく、実際に走行可能な試作車として来場者試乗までできたのです。当時としては画期的な取り組みで、現在の「eキャンター」へと進化しました。また、ダイハツは独自開発の液体燃料電池を搭載した軽商用車「FC商CASE」を出展。床下にシステムを配置することで、上部を全て荷台として活用する革新的な設計思想を示していました。

これら先駆的な電動商用車の試みを見ると、日本メーカーが早くから次世代モビリティの姿を描き、着実に開発を進めてきたことがわかります。あなたが今日目にする電動商用車の多くは、この時代に蒔かれた種から育ったものなのです。